■7月12 日 監督のW杯だった
● 決勝戦 オランダースペイン 0−1(延長) ヨハネスブルグ
スペインが勝つと世の中のちびっこが勇気づけられるし、オランダが勝つと美しさより強さの新トータルフットボール誕生かなどと、どちらに加担するでもなくゲームを見ていた。前半はスペインのパスワークをオランダが激しい守備でつぶす。退屈。その上オランダに汚い(本当に!)プレイが多いものだから気分が悪くなる。カード5枚。後半はビジャとロッベンのシュート合戦になるが決まらない。カード4枚。で、延長戦である。PK戦だけは避けてくれと念を送っていたら、延長後半11分イニエスタがセスクからのボールを上手くトラップしてシュート!GOOOOAL!よかった。イニエスタで。よかった。オランダじゃなくてスペインで。だって延長30分だけでカード5枚。計14枚。
スペインのデルボスケは、彼がレアルマドリー最盛期の監督だったころから私は尊敬している。かつて名選手いま老獪。かたやオランダのファンマルヴェイク監督。代表選手は短命、自分に見切りをつけて監督業へ(拙稿6月28日参照)。今回も予選から決勝までのチームの作り方、つまり各試合における選手のピーク度を10%から100%までに上げる過程が素晴しかったので、これぞW杯の戦い方と注目していた。ところが決勝戦が始まると、オランダは飛び蹴りあり、ハンドあり、ファウルのデパートではないか。試合終了後「我々は沢山のファウルを犯した。でも相手も同じだ。最後にCKをもらえたはずなのに審判は見ていなかった。勝ちたかった。辛い」と監督は熱く語る。残念なコメントだったなー。ロッベンが「悪いゲームでもいい。勝ちたい」と試合開始前に言っていたこととズレがない、ってことはファウル容認監督だったということか。本当にLEONにいうチョイ悪オヤジだ。やれやれ。
思えば今回のW杯、スター選手が不調だけでなく、例年のように注目を集める新星もいない。身振り手振りしゃべりぶりが楽しいマラドーナ監督は誰よりもカメラを引きつけたし、ノンタレの若造たちをまとめあげたドイツのレーヴ監督も素晴しかった。試合毎のチームの進化は、新興IT会社の快進撃またはドイツ版Rookiesを見ているようで、ドイツ代表としてタコのパウルと同じくらい世界の活字メディアをカバーした。
失敗事例(ごめんなさい)としては、代表監督歴10年ギリシャのレーハーゲル、同じく6年フランスのドメネクだろうか。選手の若返りをはかることができず、かといってベテランを生かすこともできず中途半端で終末をみる。特にフランスはサルコジ大統領までかつぎだす騒ぎになってしまったし。
代表監督は割に合わない仕事という。世界中が見ている舞台で勝つ事を目的に戦略、戦術を考えなければいけないから、ある意味一国の大統領や首相よりプレッシャーがかかる。そして今のように、プレミアやスペインリーグ、セリエAなど各国リーグにおける過酷なスケジュール、UEFAの行事を考慮しなければならないとすると、単に選手の技量を上げるだけではすまない。だからモウリーニョのような経済詳しい&メディア操作抜群という監督が、注目を集めるわけなんだけど、そんな人がそう何人もいるはずがない。
日本の次期監督にチリのビエルサが来るという噂があったが、16日チリでの続投が決定。チリは結構いいサッカーをしていたから(特に一次リーグのスペイン戦!拙稿6月25日参照)実は密かに注目していた。ビエルサはアルゼンチンの名家の出身。親兄弟が医者や学者で、本人も理屈が得意。と同時に大胆さも併せ持っていると小耳に挟んだので、日本が次のレベルを目指すにはちょうどいいと思ったのだ。本田も言っていたが「パラグアイー日本戦は、この2国以外の人は見ていないし、そういう試合だった」と。同意。岡田監督の指揮下ではここまでが限界である。よく頑張ったとは思うけれど。
試合が終わって、オランダのスナイデルが一人ピッチの上で泣いていた。悔しいだろう、でも、まだ26才。君には次がある。それと髪を伸ばした方がいいぞ。最後の最後で君が意外とイケメンだということに気がついた。技術のあるイケメン選手が増えてくれると、監督論という小難しい話をしなくてすむからね。
やっぱりW杯はスター選手がキラキラしている場所であってほしい。2014年はベッカムが復帰しているかもしれない。主催国ブラジルには新しい才能が生まれているはず。サッカーの神様は演出がうまいなあ。次への余韻をいつも残してくれる。 |