財政赤字、政府の市場介入を防ぐために
そして抵抗勢力に守られたタコ足経済の最大の問題点は、財政出動によって一部の産業部門で資源が浪費されている、なおかつそこが政治的に守られた聖域なので手がつけられないということです。
土建業界ばかりでなく、最近では、どうにも首が回らなくなった銀行業界も、政治家の懐に駆け込んで聖域のひとつになったようですね。2002年の秋、竹中金融担当大臣が銀行の不良債権処理に対して、「銀行経営者の責任追究も含めた厳しい態度で臨む」と方針を明らかにしたとき、銀行業界はこぞって抵抗の牙を剥き出しにしました(自分たちの責任を棚に上げて大臣を訴えると息巻いたのには呆れました)。しかし現在銀行に注入されている公的資金は11兆円。これだけのカネが社会的に見てマイナスなセクターの経営をサポートするために使われているのです。
また銀行業界には日本の労働力の中でも最も優秀と目される人たちが張りついています。人材は公共財であって、企業の所有物ではないので、各企業はこうした資源を社会全体のために有効に使う責務を負っています。限られた資源の浪費は許されないことなのです。普通であればそうした浪費が起こらないように市場が調整の役割を果たします。今回も「銀行経営がいよいよヤバイ」ということが明らかになったら、株価はどんどん下りました。優秀な人間はどんどん銀行から逃げ出して外資系金融機関をはじめとするほかの会社に移籍しています。
公的資金を注入して今ある銀行を延命させるよりも、いっそのことつぶしてしまって専門性の高い銀行を新しくつくったほうが、資源の有効利用を図れるかもしれませんね。銀行経営が行き詰まってしまうと、公的資金にも穴が開くかもしれません。そうするとこれはまた財政負担で穴埋めすることになるわけです。こんなに財政規律のない情けない状態でありながら、なお「このままでいいんだ。銀行はつぶしてはならないんだ」と主張する人は、全体経済にぶら下がる戦略をとっている人としか思えません。