■■ ホテル・旅館
客の目的に応じたサービスを
過剰包装、慇懃無礼はやめてね(1)
新さん
ホテルや旅館に対して言いたいことはたくさんあるぜ。
客にとっては、「そのときに得られる最高の快楽を与えられる」ということがサービスなんだよね。客は常に帝国ホテルのサービスを求めているわけではないんだよ。格安航空券で外国に行って、ゲストハウスで「帝国ホテル並みのサービスが受けられない」といって怒るやつはいないわけだ。つまり帝国ホテルに行くときはそれなりのサービスを期待していくわけ。そしてそれが得られなかったり、過剰だったりするときに怒りが出るんだよ。
雅子さま 期待しているイメージに合っているかどうかですよ。
運営者 ということは、ホテルに行くときには、「この値段ならこの程度のサービスだろうな」ということは頭に描いていくわけですね。
新さん 俵屋と余所のホテルではサービスに差があって当然なんだよ。それをまず押さえておきたいよね。
それにしても、今のホテルや旅館のサービスは過剰。過剰包装ですよ。だってさぁ、懐石まがいの料理、食べきれないし、あれは半分でいいよね。おいしいものを少しだけ、もしくは「こっちは年寄りだから半分にしてね」とか、それ以前にあれはまがいものだから
運営者 まずいですよね。うまかった試しがない。
新さん 冷えた天ぷらなんか食いたくないっての。どうして山の中でぱさぱさに乾いた刺身が出るんだ。
雅子さま ちょこっと色が変わった刺身がね(笑)。
新さん どこに行っても、火をつける小さなコンロが出てきて、あれは昭和30年代ぐらいからあるんだよね。あれはさあ、田舎者を驚かせるためにあるわけで、この日本の旅館の過剰さは、デパートの過剰包装に通じるところがあると思う。
運営者 昨日、ホテルオークラに行って、ロビーで座っていたんですけど、「いやあ、ここは暗いよなあ、早く改装してぴかぴかにすればいいじゃない」と言ったら、一緒にいた人に、「あなたは出張に行かないでしょう。出張に行き馴れている人はぴかぴかのロビーはうざったくって、ダメなんだよ。暗い方がいいんだ」と言われて、それは僕にはなかった視点だなと思いました。
新さん 要するにさあ、出張に行ってホテルで求めるものは、快楽ではなくて快適さ。それと後はスピード、すぐ飯が食える、すぐ寝ることができる、ファクシミリが送れる、ネットにつなぐことができる。
別に華やぐ必要はないわけだから、そこそこ落ち着いていればいい。そういう意味では新婚旅行で行くホテルとはやっぱり違うんだよ。
だから、自分がどういう快楽を得たいのか、どのくらいの対価を払うことができるのかということによって、サービスの質は規定されると思うな。出張の時のホテルと、新婚旅行で泊まるホテルと、不倫旅行で行くホテルと、家族旅行で行くホテルでは求めるサービスが違うわけ。その人の目的に応じて快楽をどのように与えることができるかというのが、ホテルにとってのサービスの基本だと思うよ。
そこから、乖離してしまったホテルというのは、慇懃無礼であったり、ツンツンだったりするわけ。バンコクのオリエンタルホテルなんかは完全に勘違いしてるよね。「うちは世界で一番よ」と思い込んでいる。だからサービスが慇懃無礼になってしまっている。「うちのサービスの質に合わないのはお前が悪い」と、客の方が悪いと思ってしまっている。「それは違うだろう、逆だろう」と思いますね。完全に勘違いしている。
雅子さま オリエンタルホテルに泊まると、みんなニッコリしてくれて、館内のどこにいっても誰もが「Ms.雅子」、「Ms.雅子」と名前で呼んでくれるわけですよ。まあ良いんだけれど、行動を監視されているようでちょっと気持ち悪かった。こういう扱いに慣れていないのがいけないんだけど(笑)。