■■ ホテル・旅館
客の目的に応じたサービスを
過剰包装、慇懃無礼はやめてね(3)
新さん パソコンだって、持ち運びができるように特化するとか、ゲーム機のように特化するほうがその分の性能はいいわけで、「ある快楽を提供する」という単体の機能に特化したほうがより効果を発揮するということはあるだろうな。
運営者 何でも入れちゃえばいいということではないわけですね。逆に言うと、どうしてみんな、何でも詰め込もうとするんでしょうか。
雅子さま 幕の内弁当の文化ですよね。
新さん サービスをする側が、あれもこれも「入れておかなければあきられてしまうのではないか」と思って不安なんだろうね。そういう思い込みがあるのでは。 みんな、「あれがないじゃないか、これがないじゃないか」とうるさく注文するから、いらないものまでどんどん増えてしまう。でもよくよく考えてみるとそんなことで文句を言うやつなんか2年に1回ぐらいしかいないわけだけど、それでもどんどん付け加えてしまう。だけど最大公約数の客はそんなものは求めていない。
運営者 そういえば、ホテルにも旅館にも歯ブラシがあるけれど、外国で歯ブラシ置いてるところなんて見たことないですよね。
雅子さま 日本資本のホテルでは出てくることがあるけどね。第一ホテルのグループとか、東急系パン・バシフィックグループのホテルとか。
新さん ほしいやつは、フロントに「歯ブラシください」といえばいいんでね。歯ブラシなくたって、旅行者は怒らないよ。だって通常旅行に行くときは歯ブラシは持っていくもん。
雅子さま 日本人以上にガイジンは歯に対するこだわりがあるから、絶対持ってますよ。スマイルの時の歯の白さでステータスが決まるので、みんな小さな時に歯列矯正するし。そういう人たちだから「歯ブラシをホテルから提供してもらおう」などとは、だれも思っていない。
個人的には歯に対する見解というのは日本は欧米に比べて30年ぐらい遅れているような気がします。だから日本の進んでいる歯医者さんはロスで勉強して帰ってきますよね。
新さん それは日本の水のせいかもね。日本の水は軟水で柔らかく、美味しいでしょう。柔らかいということはカルシウムが少ないわけ。タイの人たちは歯が真っ白なんだけど、タイの水は日本に比べるとカルシウムが60倍ある。日本は水が柔らかいのでご飯がおいしく炊けるのはいいんだけど、その分歯によくない。
雅子さま タイの人は毎日フッ素加工しているようなもんですね。
新さん もう真っ白、ピッカピッカ。
雅子さま あと今日本の旅館で勘違いしているのが、日本はチップ社会じゃないのに、旅館に対しては、結構包まないといけなくなってますよね。2000円とか、3人だったら5000円というのが相場だと思いますが。
欧米だと、何かするたびに1ドル札を握らせばいいだけで、その基準から比べるとちょっと高すぎるな。旅館のチップは巨額です。
新さん でも、サービス料も取ってるんだね。
雅子さま ええ、そのほかにということなんですよね。
新さん ぽち袋は持ってないとね。
運営者 そんなもの、ふつうは持ち歩かないじゃないですか。なんという面倒な話だ。
新さん それはまあ決まりだもんなあ。そこはクリアしないと楽しくないし、楽しめない。逆に言うと、日本人が一対一でかしづかれてサービスを受けるのって、今は旅館ぐらいじゃないのかな。