ナビ1ナビ2ナビ3ナビ5
ナビ4ナビ6

MBA取得者の4つの転職パターン  内古閑 宏

内古閑 宏(うちこが・ひろし)
President & Business Producer, Knowledge Inc.
2000.2.7

 MBAを取って帰ってきて1週間後くらいには、もう外資系コンサルティング会社から転職の誘いの電話がかかってくることもあるようだ。

 MBA取得者の転職の4つの対応パターンがあると思っている。いずれも本人たちが会社や仕事に対してどのように接するかという態度が反映されているのだと思う。

 最初のカテゴリーは、日本に帰ったら一刻も早くカイシャを離れたいと積極的に就職活動をする人たちである。そういう人はまず、ヘッドハンターに会ったり、知り合いで転職経験がある人の話を聞きに行ったりしているようだ。
 「辞めることを上司にいつ言おうかと思ってたんですが、年末に言うことができましたよ」と嬉しそうに報告してきてくれたりする元気な人たちである。

 二番目のカテゴリーは、数としてはかなり多いと思うのだが、カイシャを辞めるか辞めないか引っかかっている人たちである。客観的に見てもカイシャを辞めても十分やっていける能力はあると思うが、なかなか辞めようとはしない。
 カイシャに対する文句は言うのだが、「ではもう辞めるのですか」という話になると「でもね」という言葉が出て、「家のローンが」とか「家庭の事情が」などと言ってなかなか辞めない。

 三番目のカテゴリーは、数は少ないのだが、意外と辞める人が多い。仕事の能力があって、ビジネスに対するセンスが良くて、カイシャの問題もちゃんと認識しているけど、黙って静かにカイシャに残っている人たちである。彼らはカイシャの中で、うまく立ち回って順当に出世し、よいポジションを獲得している。不平も何も言わない。しかし、黙っていきなり辞めてしまうのである。
 「まさかこの人はうまく社内でやっているのだから辞めないだろう」という人が、帰国後5年くらいしていきなり辞めたりして驚かされる。もともと自分の去就については他人に言うことではないと思っているのか理由は定かではないが、私としては「どうしてこんな優秀な人が日本のカイシャの中で耐えていけるのだろうか」と常々不思議に思っていたところに突如辞めた話を聞くので二度ビックリするというわけである。

 最後のカテゴリーは、留学から帰国後組織論理に順応して働き続ける人たちである。

 数で言うと、自費留学組は圧倒的に最初の「一刻も早く」パターンが多いのではないか。かなり積極的に、仕事も待遇も充実を求めて攻めていく人たちである。
 社費留学では、やはり最後の「組織で働き続ける」パターンが一番多くて、次に文句を言うことが多い「引っかかってる」派、そして実行力のある「黙っていきなり辞める」パターンが続くのかもしれない。



 ビジネススクールで成績の良かった人が良いビジネスマンであるかと聞かれると、よくわからないとしか答えようがない。同窓会で会った同級生のアメリカ人でも「こんなこと勉強していったいなんになるんだ!」と叫んでいた人や、「授業が難しくてとてもついていけない」とぼやいていた人が、しっかりIPOしていたりする。

 最近では、日本人がビジネススクールに入学すること自体がむつかしくなってしまっている。私が留学した当時は、教授がかんばん方式を研究して「リーン生産方式」なんて持ち上げていたので、私のようにメーカから来た学生には日本の生産現場の実際について語ることが求められていた。私も喜んで話したし、実際にケース教材をつくったりもした。
 つまり、ビジネススクールにとっては、学生も資源なのである。では今の日本人がビジネススクールに行ったときに、いったいどういった情報を提供することができるのだろうかと考えると……。



スクリーンショット 2013-02-19 16.11.15.pngスクリーンショット 2013-02-19 16.11.30.png