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「本社スタッフの意識」を分析すると  内古閑 宏

内古閑 宏(うちこが・ひろし)
President & Business Producer, Knowledge Inc.
2000.2.4


 本社の企画部門では「A3資料」というしきたりがあって、企画書の類はたいていこのA3に横書きで作ることになっていた。企画部門の社員たちは、このA3資料を書いているとなにか"企画"をやったような気持ちになってしまう。
 しかし、紙だけでは儲からないことにはいずれ気づく。ここに欠けているものは一体なんだろうか。

 それは、学校からすぐに大きなカイシャに入った社員たちには「自分が仕事をすることで、なにか付加価値をつけることで代償をもらう」という基本的なことを体験としてやっていないからではないかと思う。かくいう私もその一人であった。

 カイシャに入るということは、たいてい既にできあがったビジネスモデルの中に入ることなので、今までの仕組みを続けていれば収益が上がるようになっている。そうすると「モノをつくって棚に並べれば売れるだろう」という意識になってしまう。
 しかも、一生懸命仕事をする人もそうでない人も、新入社員の時は待遇の差は誤差の範囲でしかない。商売をしているという実感はなかなか得ることができない。

 一方、ベンチャー企業や自営業の人たちは、「お客さんからお金をもらうのはたいへんなことだ」と日々意識しながらビジネスをやっているのではないか?ビジネスをやるということは"たいへん"なことをするのが当たり前ではないのか?
 「このままではヤバイ」と感じる人も多くいた。しかし、「今まで通り働いていれば、切り抜けられる」という直線思考に陥ってしまうことも少なくなかった。

 ABC導入の提案は採用されなかったが、「とりあえずもうワントライやって、ダメなら辞めよう」と考え、ハードウエアは端末と割り切って安くして、それ以外で儲けようと言うビジネスプランを提案した。5年前のことである。今のインターネット時代を先取りした企画だったが、「ハードを安くして、どこで儲けるんだ?」と質問された。

 ベンチャーの弱みは目先のことにフォーカスするしかないことであり、大きなカイシャは逆に余裕があるのだから先手が打てるはずであると思っていた。
 そして提案した通りのインターネット時代が来た。強くて売れている製品を持っていると、革新的な技術が持っている可能性を見過ごしてしまうことがあるのかもしれない。
 知らない内に会社内で壁を作り、会社以外の世界との間にも壁を作り、結局は消費者の実感や新技術を判断するセンスを鈍らせていることはないか?

 壁に穴を開けてリスクに身を晒す覚悟を決めた人がもっと増えたら、と思ってやまない。日本経済の行く末は、カイシャに勤める人たちの決断に大きく左右されると思う。



 では、カイシャはどうしたら変わっていくのだろうか。

 まずビジネスが行き詰まってしまえば、変わるしかない。 
それから、外部環境の変化や外部からの刺激により、変わらざるをえなくなるかもしれない。しかし、外部のコンサルタントの立場で提案しても、「あなたはウチの社内の仕組みがわかっていない。そんなことはウチでは絶対できないんだ」と言われることもあるらしい。
 そうしたカイシャの中では、意識の高く、十分に目が覚めている人が生きていくのは結構難しい。つらい思いをし続ける場合もある。年功序列意識があると、彼らには出番が回らないことが多い。

 そういったカイシャの中で我慢して20年経ったとしても、役員に嫌われたなどという理不尽な理由で、今までコツコツと積み上げてきたものを一度に否定され、50代半ばで会社から放り出される、なんて考え過ぎだろうか?
 いずれにしても、私はリスクを取ってでも精一杯自分がやりたいことをやれるように生きていきたいと思った。

 企業というのはそもそもビジネス機会が集まってできた“場”のはずである。ところが果たしていまの“カイシャ”はそうであろうか?
 本社として使っている超高層ビルがあるが、あれは資産であって「会社」そのものではない。「あそこに行くこと自体が仕事をすることである」と思い込んではいないだろうか。そうでないことを祈る。
 「この人がインテルに移籍すれば給料がすぐ3倍になるのに??」というような優秀な技術者が、インテルに行って技術指導していることもある。そして日本に帰ってきたら……。
 これでいいのだろうか?

 こういう考え方をする人は決して少数派ではない。MBA取得者には、比較的転職のチャンスも開かれている。私はMBAのネットワーキングをやっているので、比較的多くのMBA取得者を知っているが、彼らの転職は、いくつかのパターンに分類されると思う。

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