旧日本国型企業の末路は悲惨だ(2)
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 結論としては、変化への対応は不可能であるということですね。
飯坂 サントリーの缶コーヒー「BOSS」のコマーシャル。「で、あるからして、わが社もインターネット時代に乗り遅れないために、この際eコマースに賭けてみたいんだ」という社長の話を聞きながら演歌を聞いている若者が、「バカ言ってんじゃないよ~」と思わず口ずさんでしまうコマーシャルみたいですな。
運営者 僕、あのコマーシャル好きなんですよ。何が面白いかっていうと、すごい皮肉なんだけど、あのタコ社長が、今ごろになって、「インターネットに社運を賭ける」なんて言っている時点で、もう既に負けているわけですから。だから、「バカ言ってんじゃないよ~」というのは正しいんですよ。図らずして彼は正しいことを言っている(笑)。
飯坂 それがあのコマーシャルの狙いなんでしょう。あれはスモールヒットだね。
運営者 わかりませんけど。「それちょっと、今さら無理だとおもうんですけど」ということです。今やるのなら、とりあえずすぐにeコマースをやってみて、その結果を受けて、「これからどーするか」という会議じゃないとね。
あんな感じで社運賭けたら、負けるのまちがいないもん。
「eコマースは儲かりません、儲からないながらも従来のルートを補完し、かつ相乗効果を求めるために、相応のコストをかけていきましょう」というのならまだわかるんですよ。
飯坂 しかし、ああいうカイシャ多そうなんだよなぁ(笑)。
運営者 それはだから、どうにもならないカイシャってことですよ。
「旧日本国」もいいところですよ。しかし、ああいう会社が多いとしたらそれは大変な問題ですね。なぜかというと、これからの社会では競争の条件が変わっていくのに、それに対する対応能力がほとんどの会社にはないということを意味するからです。
そうすると、そういう会社はどういう死に方をするのかということになりますね。
飯坂 まあ、蓄えを食いつぶした時が死ぬときですかね。
運営者 もう食いつぶしてますって。従来の売れ筋商品は、徐々にネットに取られていってしまうかもしれない。ほとんどの商売は、異常なほどの「情報の非対称性」の中で成り立っていたんですよ。それをネットがつぶしてしまったときに、消費者はスゴイ選択枝を持つことになるわけで、口銭商売をやっていた会社はまったくおまんまの食い上げになるわけです。
飯坂 そういう二次問屋、三次問屋に勝ったところが寡占する状況が生まれるんではないでしょうか。
運営者 業種によっては、勝つカイシャが生まれるでしょう。BOSS商事も、せめてあと一年前に「我が社もeコマースに賭けてみよう」と言っていれば勝つことができたかもしれない。
飯坂 問屋には、掛け売りをするという金融機能があったわけで、そこのリスクを取っていたところに存在意義があった。競争もなくて、金融機能もないとすると、生きていくことはできません。
運営者 そんな会社は流通の間に入って、流通コストを上げているだけなのだからなくなってもらったほうがいい。
飯坂 今までは、その流通価格が上がった部分というのは、金融のリスクを取っていた分という解釈ができなくはなかったんですけどね。だって昔は一般の商店には銀行がお金を貸してくれなかったんだから。15年くらい前までは。
運営者 その後すぐに、興銀が八百屋にも貸すようになりましたけどね。(笑)
飯坂 結局そうやって、貸出先を取られていった第二地方銀行が不動産屋に貸し込んでいったという構図なんですよね。都銀はつぶすには大きすぎるのであまり潰れてないけれど、第二地銀や信用金庫は潰れてしまった。
運営者 金融というのは、「旧日本国」の産業構造の中でも最も大きなピラミッドだったと思うんです。戦時経済を引き継いだ最大の資本分配構造だったわけです。かなりな機能が結局、ネットに取って変わられると思うんですが、何が機能として残るんでしょうね。
飯坂 決済も、BtoBのCALSか何かでやればおしまいだし。
運営者 SCMとも一体になって……。BtoCだってそうなってますよ。僕の座ってる椅子ですけど、決済はコンビニですよ。ネットで買うと、2日後には着きますよ。執筆のために、eコマースを体験してみました。生まれて初めてコンビニエンスストアで14万円も払いましたよ(笑)。