問題を先送して、ますますツケを増やすシステム
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 だから新生銀行の反応は正しいわけです。なぜほかの銀行は文句を言わなかったのかね。
運営者 そこがメインバンク制度。メインバンクがウンと言っている限り、各行はとりっぱぐれがない。なぜならば、メインバンクが引き受けたということは、万一融資先がつぶれた場合にはメインバンクがその分を払ってくれるという暗黙の了解があったからです。それで最初は、みんな新生銀行に文句を言っていたけど、僕はやっぱり飯坂さんと同じで、契約に瑕疵担保特約条項がある限りは彼らが正しかったと思う。瑕疵担保特約条項の是非は別にして。連中は、旧日本に引きずられていない、新しい立場なんだから。
それで最初の時点で、預金保険機構が1000億円近い債権放棄をして、「12年間に再建できさえすれば、追加の国民負担をしないんですよ」と説明をしていました。一体どういう根拠に基づいて「12年間で経営再建できる」という判断をしたのか、その判断材料とは一体何だったのか。
飯坂 あるいは債権放棄をしたとしても、まったくの放棄になるわけではなくて、何パーセントかは返ってくるんです。そういう見通しがあるはずなんです。たいがい会社は倒産しても債権がまったくゼロになるわけではない。「では実際何%を返ってくるのか」という数字すらないわけですよ。
運営者 いや、僕はそこまで譲歩するつもりもなくて、こんなとこで国民負担を発生させるということはあってはならないわけですよ。なぜならば、そごうは民間企業だからです。いくら借金を抱えていても。
飯坂 確かに、そごうを潰すことなく債権放棄をするというのは、全然筋が通らないですね。
運営者 そこで僕が言いたいのは、あの判断をした時点で、そごうを再建することができるかどうかという判断を誰がどのようにしたのかということです。一番の問題はそこじゃないですか。判断したのは一体、だれなのか。12年間で再建できると判断したから、「国民負担は発生しない」という理屈なわけですから。それはどういうプランに基づいて誰の責任で判断したのか。後になって「いや、やっぱりだめでした。あと3000億円税金につけ回しします」というのは許されないことですからね。
では誰が責任をもってそんな判断をすることができるのかと考えると、誰もそんな立場にはいないわけです。ということは、やはりそごうはあの時点でつぶすべきだったんだと思います。
真空状態の中で、判断者が居ないにも関わらず決定が下されるという異常さ。こういう形でのツケの先送りは、毎度の話ですよ。国鉄債務だってそうだし、公共事業の事業費が事後的に増えるのもそう。いったい誰の利益を考えてやっているんだ。それを民間企業にまで拡げようというんですからね。
まあとにかく、いくらなんでもふざけた話だと思いましたよ。
百貨店のノウハウのイロハもわかってない会社があんな無謀な大規模投資をするということに関しては、まず銀行が止めるべきだったんですよ。貸してたやつらがバカなんです。
飯坂 付き合いで貸してたんでしょうけれどね。メインバンクシステムと、後、大蔵省も検査をやっていたが文句を言わなかったわけです。大口貸出先については大蔵省も見ていたかもね。