■マクロ経済政策でできることはすべて終わった
おやじ それにしても、なぜこんなに一生懸命働いているのに、給料が下がるんだろう。政府は一体何をやっているんだろうか?
若造 「効率性」をちっとも意識せず、ライパル企業をうち負かす戦略性も持ち合わせない旧日本人が、企業の資源配分の決定権を握り続けていれば、業績が悪くなるのは当然だよね。
マクロ経済政策について言うと、ここまで政府の公的債務が膨らんで「これ以上財政出動ができない」という状態になり、しかも銀行の体力が尽きて国有化寸前という状況になってしまっては、財政も金融もとり得る対策がものすごく限られてしまうよね。今考えるべきなのはマクロ経済ではないと思うんだ。
おやじ 経済政策というのは、マクロで考えるものだろう。政府にはそれしかできないんだから。
若造 政府に頼る発想だからマクロの議論がみんな好きなんだよ。マクロ政策で動かし方を決める金は税金であって、誰の金というものでもないからね。しかしバブル以後130兆円も投入して景気対策をやっても不況が続いたのは、民間部門に根本的な問題があるからなのはまちがいがないでしょう。ひとつひとつの会社が儲かる体質になっていれば政府が景気浮揚策を考えなくても、みんな安心して買い物するし投資するから、経済成長は続くはずなんだよ。
おやじ うちの会社も赤字続きだったような気がするな。だけどいくら赤字だって、こっちは働いてるんだから給料を上げてもらわないと話が違うよな。
若造 会社との雇用契約には、「毎年給料を上げる」という項目はないと思うけど。
おやじ そりゃそうだが。じゃあ一生懸命働いているのに、会社が儲からないし、給料が下がっちまう理由は何なんだろうな?
若造 それは、サラリーマンのほとんどを占める、旧日本人の「組織や仕事、人に対する関わり方がまちがってる」からだよ。
旧日本人サラリーマンの「働くことについての意識」が、国際化や賃金物価の高コスト化、市場縮小による競争激化といった環境変化に適応できていないことが、会社が儲からない原因なんだと思うよ。「ビジネスとは何なのか」という感覚は、現代では高度成長期、その後の安定成長期とはまったく違うものが要求されていると思うんだけどね。
おやじ これまでの発想だと何が不都合なんだ?
若造 これから何がどうなるのか先が読めないし、日々変化する環境に適応できないよね。旧日本人はそもそも変化に対応して自分が変わっていこうとする気がないから、変われない。新しいものが嫌いで変化を恐れている。だから不合理が放置される、仲間との癒着を優先するから資源がムダになる。
そんなことでは今後は生き残れないはずだよ。それはまちがった認識だ。だから意識改革が必要なんだよ。旧日本人は、古い意識の殻を脱ぎ捨てて、新日本人的な発想法を身につけなければ。