新日本人の対人観■
哲学や理念で動く
「人はルールや価値に基づいて動くし、動かなければならない」と思っている
ゴーン氏は、「マネジメントの仕事は、会社と社員のために、会社と社員の能力を最大限に発揮させること」と考えている。そのために、「できるだけ明確なガイドラインを示し、重要度によってやるべきことの優先順位を決める」「それに従って行動すべきである」「明確な戦略やガイドラインや優先順位もなく、権限だけを与えたりしたら、各人が別々に好き勝手な方向に進むことになるだろう。これでは個性も意欲も情熱もない会社になってしまい、部門間の衝突が多発し領主同士が争う封建制度さながらの状態になるだろう。これでは会社の業績は上がりようがない」としている。
新日本人は指示に従って確実に自分の役割を果たす。それで勝てなかったら、マネジメントが悪い。現状は勝っていない。マネジメントが問題の本質を把握せずに指示を降ろすので、部下は指示が信じられなくなり、得手勝手に動いている。各人の持つエネルギーや潜在能力は分断されており、組織力にならない。
会社側の期待を遙かに超える個人の能力を引き出すものは何か、内発的な動機に発する行動である。その自発性を最大限に発揮させるのは、個人の心の中で長い間の経験からの「気づき」を集積した価値観や、それから生成された信念であり、それらの総体としての生きるための哲学だ。
自立した新日本人は本人の信念に従って、よりよきものを求めて行動する。会社に入るのはあくまで組織目的と自分の志向性が合致したからであり、決して全面的に組織のロジックに服従するためではない。組織行動が変化して、自分の信念に離反するようになったら、速やかに組織から袂を分かつ覚悟である。
新日本人を動かすものは、共感できる組織目的であり、それを効率的に実行するための戦略に基づいて付与される合理的な任務であり、目標に向けて共に歩む仲間たちとの共働意識である。自分が信じる価値を守るために競争のルールを遵守することも、その延長線上にある。
こうした人たちが社会参加意識を持って力を合わせれば、理念が社会を変える核になるし、理念によって社会を作ることすら可能なはずなのである。
私はその可能性を信じたい。