旧 日本人のネットワーク基礎能力■
2.会社の外には出て行かない。ネットワーキングの持つ意味を理解しない
旧日本人は、外部情報を積極的に摂取しようとはしない。
箭内氏は「長銀役員で外部に豊富な人脈を持っているものは少なかった」「役員の夜のスケジュールを見ても、埋まっていない者が多い。埋まっていても取引先か内部が多い」「外部との人脈が乏し」く「天動説」だったと振り返っている。
情報の重要性を深く意識していないので、どんどん社外の人々と接触して、違う文化や違う思考に触れようとはしないし、むしろ「外に出るのは組織内の同一性を乱す余計な行動だ」と考えている。特に金融機関などは、社外から電話が掛かってくることすら嫌がられる。ある調査では、全体の三五%の企業がメールの私的利用防止策を講じており、そのうち「メールの閲覧、履歴保存」をしている企業が六一%、そのち二五%の会社は従業員にその事実を説明していないという。会社側も、外部と接触するような社員は信用していないのだ。
旧日本人にとって外部情報よりはるかに重要な情報は、社内政治にかかわることである。だから毎日同じ職場の人間と飲みに行って、飽きることがないのだろう。
だが現在進行しているのは、情報力を中心とした社会の序列の組み替えなのである。有益な情報をいち早く手にするものが力を持つ、この現実に旧日本人は気づかないし、目を逸らし続けている。
ビジネスとは情報戦である。身につけるべきなのは、情報の確度や重要度を自分で判断できる価値観だが、それは組織内でのみ納得性がある価値基準ではなくて、マーケットや業界、企業社会全体で通用している価値のスタンダードであり、状況変化に従って日々移り変わっていく。常にキャッチアップし続けなければならない。ビジネスマンには社内に引きこもっている時間などないはずなのだ。価値観は常にブラッシュアップしなければ、すぐに陳腐化して通用しなくなってしまう。
だが旧日本人は、情報の価値や活用法を知らない。新しい情報は、組織の秩序維持にかえって不都合だから、避けてしまう。だから旧日本人は適切に情報に処理対応できないのだ。旧日本人はビジネスにおいて肝心要の、情報の確度や重要度を判断できない。これは致命的なことだ。