「下からの革命」を可能にする要素
不況とITが、わが国始まって以来最初の市民革命を成功に導く。
今や就職前の学生で、「自分が一生の間一つの会社で勤め上げられる」と思っている人はいません。彼らの心は会社から離れているのです。そしてサラリーマンでも、将来に可能性を残している若手ほど、自立を真剣に考えざるをえない状況にあります。このように、若い世代ほど会社への依存心が薄れ、新日本人的な意識を自然に持つ環境ができてきました。
その一方で、もう既に転職できないし、といって自分の意識を切り換えることもできないミドル以上の旧日本人は、ますます意固地に「これまでのやり方を貫き通すしかない」と主張しますし、それを部下にも押しつけます。彼らは会社にしがみつく以外の道がないからです。若手に主導権を渡してしまったほうが会社がよくなる可能性があるのですから、そうすればいいと思うのですが、旧日本人はそんな合理的な考え方はしません。彼らは「秩序を守ることと、自分の地位が上がることが何よりも大切だ」と考えている人たちですから、実権を若手に渡すなど考えもしないのです。
しかし旧日本人が経営している限り、日本企業は国際競争に勝てませんし、日本経済の再生はあり得ないのです。もちろん若手にもそれはわかっています。ですから社内での新日本人と旧日本人の対立は今後ますます激しくなっていくはずなのです。
新日本人にとってみれば、ビジネスマンとして生き残るためには、旧日本人がつくり上げたピラミッド構造を土台からひっくり返す以外にはないということになります。これはまさに、新日本人による革命です。おそらくわが国始まって以来最初の市民革命になるでしょう。
新日本人による革命は、草の根の下からの革命です。それはずいぶんむつかしいことのように思えるかもしれませんが、わたしには十分可能に思えます。「上からの革命」のほうがむしろ市民に根づかないのでむつかしいのです。「下からの革命」こそ可能性が高いのです。しかも現在われわれは、それを可能にする2つの好条件を満たしていると思います。