木下 放射能防御プロジェクトは、もちろん政治団体ではありませんが、メンバーの中で地方議会の選挙に出馬している人が何人かいます。この前Oさん(M県でガレキ反対の中心で、放射能防御プロジェクト中部の主要メンバー)がK市議に当選しました。
放射能防御という点から考えて、地元ベースで何ができるのかについては、現実的に働きかけていく必要があると思っています。
運営者 1年目からそうした政治との関わりは議論されていましたね。
木下 ただ難しいのは、「被曝回避という大命題を争点として選挙を戦えるか」という問題があります。
有権者の中にも、被曝についての意識が高い人は多くはありません。「知らない」とか、「わからない」と言う人達が多いので、被曝回避を政治的イシューにするのが難しいんですよ。
とすると、地方議会選挙においては、被曝回避、脱原発という大枠での主張は維持しながらも、その地方での現実的な政治的問題をイシューとして戦っていくことになります。それはそれで良いと思うのです。
運営者 実際、被曝回避の問題でも、地方レベルで対処しなければならないのは、学校給食の問題であるとか、避難者に対する住宅供給とかの問題だったりするわけで、そういうのをカバーしながら現実の政治問題に対処していくのが地方政治なんだと思います。
木下 私が避難してきている自治体は革新首長なのですが、前回の選挙の時に対抗馬として出馬したのは知人で、その2人とが両方とも反原発という構図でした。被曝回避という観点から言えば、僕の友人の方が意識が高かったと思います。
運営者 それは重要なポイントで、被曝回避というのは、保守や革新を超越した問題であるということです。
木下 そういうことですね。これは政治的なイデオロギー対立とは異なった次元の問題です。
被曝回避というのは具体論であって、「現実とどのように向き合うか」にしかこの話の本質はありません。
被曝回避を唱えている人が、現実にきちんと向き合っているかというと、そうも言えないという問題があります。
放射能防御プロジェクトで三田先生と僕の間で問題視していることに、医師グループのメーリングリスト問題というのがあります。
運営者 放射能防御プロジェクト内の医師のメーリングリストについてですね。
木下 メーリングリストにおける問題というのは、普通はメーリングリスト内で起きるトラブルのことなんです。しかし我々にとっての医師のメーリングリスト問題は、「何も起きてこない」という問題です。
署名とかの募集はあるのですが、どんな事を語りかけも反応が殆どありません。
医師であれば、実際の診察の時に、被曝問題についてどのようなことがあったか、どのように診療行為に取り組むのかという現実の.実務ベースの話があるはずです。だけどそういう話にはなっていません。それはおかしなことだと思います。
運営者 医師であれば、実際の症例に対して診断を下す必要があります。
そこに関して判断停止に陥っている医師が大多数なのかもしれませんね。