木下 三田先生のところでも、甲状腺検査については、件数が多くなると保険のチェックが入るので、保険適用が取れなくなっています。すべて自費になってしまっています。
検査費用は、高くもないけど安くもないといったところです。
だけど、東京の他の医療機関は、検査費用3万円取っているといった話も聞きます。
運営者 えっ、そうなんですか?
木下 これはどういうことかというと、実は被曝問題に多少なりとも関わってきた医師たちのお金に対する態度が、露骨になってきているということなんです。
つまり、「被曝回避側の人だからまともなことをしてくれるだろう」と期待するのは、間違っているという事ですよ。
被曝回避の大切さを認めつつ、一定レベルのまともなことをしている医療従事者がどのくらいいるのかと考えると、かなり心細いと思います。
運営者 うーむ・・・
まあ、そういう被曝に対する意識の高い医師がいたとしても、周囲に言いませんからね。だからその存在が一般にはわからないんですよ。
木下 大病院に勤務している医師の中にも、まともな医師は存在します。だけどその人は口伝てでしか患者を取らないようにしていて、月に10人とか20人とか人数を決めてるんです。そうしないといろいろと面倒なことになりますからね。
まともな医師には、そういうケースもあります。
そうでなくて三田先生みたいにクリニックで直接患者を受けてしまうと、患者が増えすぎて自費検査になってしまうわけです。
運営者 しょうがないです。
木下 そうなんだけど、首都圏では明らかに営業目的でやっている医療機関も出てきているということなんです。
運営者 クリニックレベルでということですよね。そういうクリニックはちゃんとした甲状腺の診療をしてくれるのかなあ。
木下 それでもって甲状腺学会の親分は、福島県医大副学長の山下先生のわけじゃないですか。彼が旗を振って「甲状腺の健康被害は大したことないんだ。ニコニコしているところには放射能は来ないんだ」という印象操作をしているわけで、日本中の甲状腺専門医がこの渦に飲み込まれている状況ですよね。
ZDFホイテショー「ニコニコする人に放射能は来ない!」
運営者 じゃあ、東日本で子供が初期被曝していて、とても不安を持っているお母さんたちは、どうすりゃいいんですかね?
木下 やっぱり、関東東北の医療機関だと比較的対応しにくいみたいなんです。
非汚染地である西日本だと、「じゃあいつでも診察しますよ」と言う医者はいるんですよ。
今僕がいる町の開業医は、普通にそう言う人がいますからね。
だれも何も言ってるわけじゃないんだけど、関東の医師たちの中で無意識にそういう雰囲気ができているのかもしれませんね。
運営者 関東の医者の中には、被曝に触れてはならないという「空気」があるのでしょう。
木下 そうすると関東から脱出できない人は、そういう「空気」の中でまともに診療している医者は誰なのかを見つけなければならないということです。
そういう医師を見つけられない人は、被曝への認識はひとまず置いて、専門医で技能がまともそうな人にかかるくらいしか手はないでしょうね。
比較的、成人女性は何とでもなるんです。
「症状がある」と訴えているならば、診察は普通にまず為されますから。「調子が悪い」と訴えている状況は、それが被曝に該当するかどうかはともかく、医者が診療することになりますので。
問題は子供ですよ。お子さんはそういうことはあまり言いませんからね。そのお子さんをどのように診療してもらうかというのはなかなか難しいことだと思います。
運営者 そうですね。
■木下黄太氏インタビュー
今そこにある「放射能危機」の本質 2014年4月
「放射能防御」と脱原発を巡る、もろもろの事情 2013年7月
被曝回避、放射能防御の現状と展望 2014年11月