木下 ですから私の場合は、そういう医者をかなり探して、身内の検査をしてもらいました。だからこれはかなり特殊な医者が必要だということです。
最近のドラマの中で最大のヒットである「ドクターX~外科医・大門未知子~」をチェックしてたら、甲状腺の状況がとても悪くて、「このままでは助からない」と言われた患者がいて、その人の甲状腺をある医者が手術するんです。
その医者は確かに患者の命を助けることができたのですが、患者の声帯を傷つけてしまって声が出なくなってしまいます。
それを、米倉涼子扮する大門未知子がリカバーして、声帯を復活させる離れ業を演じましたよというのをやってたんです。
運営者 へぇー
木下 それでなるほどねと思ったのは、「甲状腺手術は、難手術になることがあるんだな」ということです。実際そういうリスクがゼロではないんでしょうね。もちろん、がんの浸潤のレベルによるわけですが。
運営者 そうですね。まあ声帯より先に転移の心配をすると思いますが(笑)。
木下 確かに。まあそういうドラマができるくらい、甲状腺癌というのが難しい手術なんだと思います。
そうするとこれは、N先生の言われていることにつながるのですが、福島県立医大が今やっていることでいちばん問題なのは、実は「発見された子供の甲状腺癌をきちんと取り切れているのか」ということですよ。
■運営者 そうか、すでに100例以上の小児甲状腺癌(疑い例含む)が発見されているわけですからね。
木下 N先生は、「福島県立医大の医療レベルはそんなに高くない」とおっしゃっています。
そうすると、今の甲状腺癌の手術では、取りきれていないがんを集めるために、またヨウ素131を入れる手法がメインとなりつつあります。ところが福島県立医大ではそれをやっていないらしいんですね。
ですから甲状腺がんに関しては、医師の技量的にも手法的にもいろいろな落とし穴があるのではないかと思うんです。
それは心に留めておいたほうがいいと思います。
運営者 つまり甲状腺癌というのが診断が難しい病気であり、治療自体も難しく、なおかつ治療にあたる医師のレベルもよくわからない状況にあるということですね。
木下 そうすると、僕のところに皆さんから来る相談の中でいちばん困るのは、「東京から岡山に避難された三田先生の代わりになるドクターはいないか」ということなんですよ。
関東で甲状腺の問題にきちんと取り組んでる医師は本当に少ないんです。
運営者 混ぜっ返すようですが、それだったらいっそのこと福島県立医大に受診してみたらどうでしょうね。
木下 「忙しいからそんなバカなことはやめてください」と門前払いされるでしょう。
運営者 ああ、そうか。
木下 甲状腺の診断については、嚢胞の大きさや結節をどう評価するかということを正確に確認するしかないんです。
だけど最近僕のところに来る相談者は、そもそもそれができていない人も多いです。福島原発事故から3年半以上経つわけですが、結局ずっと同じところに止まっている人ばかりだと思いますね。
それから、被曝のことを踏まえて対応してくれる医者がほぼ皆無であるとも言えるでしょう。それは、僕は仕方ないのかなと思うけれど、患者さんの側としてはとても納得できないことなんですね。
運営者 そういう医者が自分で見つけられないからといって、木下さんのところに駆け込んでくるわけですか。