「日本人の通弊」後ろ向きの相互扶助観念
運営者 それで、僕らの世代までは、就職をして社会人になると、「会社のため」ということを異常に強く意識している人たちが多いんだけど。そういうマインドセットがある。君たちの両親の世代もそうじゃないかな。
りえこ そうですね。
運営者 会社に対する考え方って、どうなってるのかな。例えば木更津だったら、幼稚園から高校まで、クラスメートの親がほとんど新日鐵に勤めている人なんていうところもあって、会社の中だけで世界が完結しているという人も少なくないんだけど。そういうふうな環境だと、カイシャ=世界という感じになっちゃうよね。親子3代新日鐵なんていう人がいたりするわけ。
まり 面白い。ロイヤリティーは高くなりそうですね。
運営者 いくらロイヤリティーがあっても、リストラの嵐が吹き荒れるてるわけだし、この先どうなるかわかんないよ。でもそういう人たちはカイシャにいることが一番安心することだし、会社に逆らうなんてことは考えつきもしないわけ。
会社に逆らって、外に出されてしまったら、もう生きていくことができないわけだから、カイシャの中にいて「いかに物事を丸く収めるか」ということを考えてしまう。だから「思ったことを自由に言うのはよくない」と思っているし、改善を提案するということは、今までのやり方を変えることだから、それで困る人が出てくるわけだから、基本的にはよくないことだと思っている。
まり そういう価値観を持ってるんですね。
りえこ 公務員的ですね。
運営者 だけど、日本人全員が、日本社会全体に対してそのような考え方を持ってるんだよ。実際に、「構造改革をすると困る人がいるんだからやらないほうがいい」と思っている人がいるんだから。
「みんなが助け合うべきだ」という相互扶助の考え方はいいんだけど、前向きに助け合うんじゃなくて、後ろ向きに助ける方向にみんな考えが傾いているからまずいんだよね。
まり みんな、新しいことをしようとしないんですね。
運営者 だって、新しいことをしようと決めれば、みんながそれを身につける努力をしなければならないわけでしょう。
パソコンを導入すれば、自分がパソコンを憶えるだけじゃなくて、上司もみんなパソコンが触れるようにならなければならないでしょう。でもおじさんたちはパソコンなんか覚えたくないわけ。そういうおじさんの中でうるさい人が文句を言うと、「じゃ、パソコンを入れるのはやめましょうか」という話になってしまう。さすがに今もうこんな会社はないと思うけど、パソコン導入の初期にはこうしたケースは少なくなかったんだよね。