消費社会の「神様」は企業が供給する
運営者 ところで、君たちはテレビに出たりしてるから知ってると思うけど、仕事って、外から見るのと、裏から見るのとでは全然違うよね。
りえこ 芸能界を裏から見て、すごく汚い世界だと思いました。
運営者 でも、そういう人たちはそういう人たちで、別に勝手にやっててもらえばいいんだよ。関係ないんだもん。
りえこ だけど、世の中はそういう人たちが回してるんじゃないんですか。
運営者 それじゃ世の中は、回らないんだって。
いや、芸能界はそれで回ってるかもしれないけど、芸能界というのは世の中のはみ出し者がやっている世界であって、中心じゃないんだ。それはそれで、勝手にやっててもらえばいいんだよ。君たちにとっては芸能界が、最初に見た大人の世界かもしれないけど、あれはホンモノじゃない。
世の中はちゃんとしたリーダーが支えているものなんだよ(言ってて何か引っかかりを感じるが……)。
りえこ でも若い子たちは、芸能界にあこがれていて、例えば浜崎あゆみのストーリーとか、ほんとは全部やらせなのに、流行りとか造られたものを素直に信じていて、それはどうかなと思うんですけど。
運営者 うん、それは、人は何かを信頼しないと生きていけないからね。普通の若い女性だと、シャネルとかグッチとか好きなわけでしょう。あれって、単なる鞄じゃん。だけどそれは、単なる鞄以上のものであると思っているし、信じているし、信じたいから信じられる。
本当はね、神様なんて存在しないわけ。だからすべての神様は人が作ったものなの。人間というのは、怖いものがなくなったらおしまいなんだ。だからわざわざ、自分で恐いものつくるんだよ。それが神さまなわけ。そして人は神様を信じる。どうしてかというと、「神様にお願いしたら願いが叶う」と思いたいからね。人間って結構可愛いところがあるよね。
それでね、シャネルとかグッチっていうのは神様なわけ。ブランドメーカーは、実は「神さまを作る仕事」をやってるんだよ。拝んでいる人もいるもんね。この宗教の信仰は、ずいぶん高くつくんだよ。でもブランド品を買う人にとっては、それを買うことによって心の平安が得られるとか、すごいメリットがあるわけだ。エルメスの鞄を買うのが、生きる張り合いになってるとかね。値段に見合うメリットがあるから、人はブランド品を買ってるわけ。その人にとって、それだけの値打ちがあるからブランド品を自分で買う選択をしているわけであって、それはそれで本人の中では十分合理的な行動だし、勝手にやっててもらえばいいんだよ。
そういうものは必要なんだよ。僕だって子供のころはウルトラマンみたいな怪獣モノを見たり、ゴールデンタイムのテレビっておもしろかったもん。テレビという「箱」を眺めていると、いろいろな発見があって、勉強になったもんね。だけど今じゃ、ニュース以外のものを見ても、あまり吸収するものがないから見なくなっちゃった。でも、ドラマや映画を見ている時、疑ってかかっていてはまったく面白くないよね。つまりある部分、ウルトラマンだって、くだらないドラマだって、信じて見てるんだよ。そして世の中の多くの会社は、そのように人が信じることができる神様を作って供給してる会社なわけ。