■ ホテル・旅館
客の目的に応じたサービスを
過剰包装、慇懃無礼はやめてね(5)
運営者 俵屋は、「日本旅館ではなくて、ガイジン向けのホテルだ」という説もありますよ。
雅子さま ああ、そうかもね。そんな感じしますね。
新さん 京都の柊家旅館に泊まったことがあるけど、同じようなもんだよ。
運営者 御三家ですね。あと炭屋と。
雅子さま 私は全部、制覇しています。
運営者 それはすごい。
雅子さま 柊家は、俵屋と比べるとほんとうの日本旅館かもしれませんね。すべてが古い。何からなにまで古い。博物館かと思いましたね。ガラスも古いガラスで、微妙に曲がっていて。あの乱反射が気持ちいい。お風呂も高野槇のお風呂で。「えっ、こんなのははじめてだ」と思いました。檜とも違う不思議な感覚で。電話も黒電話のダイヤル式のやつで。あと、いい鉛筆使ってました。
玄関入ってすぐの所に、「来者如帰」という扁額が掲げてあって、それははじめて来る人でもとにかく「おかえりなさい」というふうに接するという精神なんだそうです。「おかえりなさい」の精神ですね。
新さん でも柊家はそんなに快適だとも思えないけどね。あれさあ、芸者遊びと同じでさ、やっぱり慣れが必要だよね。使いこなすだけの度量と慣れ、旅館を使う心構えが必要で、そうでないとサービスがちゃんと享受できないかもしれない。
雅子さま 行きつけていないとちょっと戸惑いがあるかも。柊家だと、女中さんにお金包んで出すと、ちゃんと「おあずかり」と書いた領収書持ってきてくれました。
新さん あとさぁ、温泉宿だと何しろ仲居さんに5000円くらい包んで、「ちょっと遊びたいんだけど」って言うんだよ。で、仲居さんが「よろしゅうございます」ってんでお後のセッティングが出来るんだよね。
運営者 それで、後でその仲居さんに来られたら困りますけどね。
新さん それがまあ暗黙の了解というやつで。
雅子さま 仲居さんはコンシェルジュでもあるわけですね。
新さん ホテルで頼めることは全部仲居さんに頼めるよ。ルームサービス、靴磨き、クリーニング、あんま……。
雅子さま それが一人の人で全部済んじゃう。ホテルだといろんな人に頼まないといけない。
運営者 そうそう、これ、どっちに頼めばいいのかなと迷うことがありますよね。「栓抜きを持ってこい」と言うのに、ルームサービスなのか、ハウスキーパーなのか、外国の安宿で下手をすると、ルームサービスは「それはレストラン言え」と言うし、レストランに言うと、「それはハウスキーパーに言え」とたらい回しされたりして。
新さん それをワンストップサービスでできるというのが旅館の良さかもしれない。
運営者 仲居さんはポータルですね。