■ 寿司屋
一番安いものが一番うまい、それが鉄則(1)
雅子さま 寿司屋も最近あまり行かなくなりましたね。
運営者 だって、みんな飽きちゃってるんじゃないんですかね。ふざけ切っていますからね。僕は今何が好きかって、回転ずしなんですよ。回転ずしと、そうでない寿司屋との差がどれくらいあるのかといったら……。
新さん バブルのころ行ってたのはね、カウンターの幅が60~70センチ。檜の一枚板みたいなところで、板さんがずっと遠くの方にいて……。そういうところって、会社の金だから食えるところであって、中身は他とおんなじなんだよね。
運営者 ぼくね、瀬戸内の人間ですから、東京に来てすしを食べても「ふーん」っていう感じでした。田舎のほうが魚はうまいに決まってるじゃないですか。
新さん やっぱりね、「その土地のもので、その日のうちに上がったもの」、これに尽きると思うな。だからオレね、シアトルとかボストンでおいしい寿司食べたことあるな。
雅子さま おいしいですよね、とろけるサーモン。もう、すごおくおいしかった(目は宙を彷徨っている)。
新さん 俺いつも旅先で言うのは、「この土地で今日採とれたものを食べさせるところを教えてくれ」と言うんだ。そうするとね、世界中どこに行っても一番うまい魚が食える。タイだってそうなんだ。
雅子さま タイにもお寿司屋さんあるんですか。
新さん あるよ。築地からケースに詰めて飛行機で運ぶんだから。そんなもんだから高いわけ。でもね、タイでとれた魚だと、まず鯛がある。それからエビ、イカ、スズキ、そういうタイで取れたその時の旬の魚が一番おいしくて一番安い。
そういう一番安いものが一番うまいんだよ。それが鉄則。寿司屋なんてそういうもんだよ。
運営者 それを言うならば日本のマグロはすべてダメということになりませんか?
新さん そんなことはないよ。下北半島の先端の大間で取れたマグロとか。1本2000万円だってね。
俺1月にそこに行ってきたんだよ。でさ、「ここのマグロ、食わせてくれ」って漁師に言ったら、「このマグロ全部築地に行くんだよ」って言われて。それで俺、「俺、築地からきたんだよ」。「じゃ、旦那うちに帰って食べなよ」だって。
運営者 マグロとすれ違いですか。
新さん だからすしはそうやって地元で食べるのが一番おいしいよ。去年鳥取県の益田に行ったときに、やっぱり旨かったな。
運営者 蟹だって、現地で食べれば刺身も食べられますよね。東京じゃ食べられないじゃないですか。やっぱりその日の朝に取れたやつでないとだめなんだそうですね。
雅子さま 「あっ、生の蟹だ!」と思って。おいしかったですよ。これはびっくりした。
新さん 甘くて溶けるみたいで。身が液状化してるよね。
あれね、ウニもそうなんだって、採れたばかりの時は身がとろとろなんだけど、それをミョウバンで固めるそうだ。
雅子さま はー、言われていればそうだ。外国で潜ったときに誰かがとってきたやつはドロドロだったもん。それがなぜか寿司屋の板に乗っかっているとちゃんとした形になっている。
新さん ボストンにいる友達がメーンとかあの辺でとれたウニをミョウバンで固めて輸出してるんだよ。彼はクール宅急便でミョウバンで固めてないウニを送ってくれるよ。それは本当にうまいと思う。