■ 寿司屋
一番安いものが一番うまい、それが鉄則(3)
運営者 寿司屋の店のしつらえなんですけど、良い寿司屋は明るいんじゃないかと思うんです。
そうだ、あの光は歌舞伎の光なんじゃないかな。歌舞伎の舞台の光というのは、無色の光なんだそうです。色がついていないわけ。歌舞伎をはじめてニューヨークに持っていった時に、連中は、色をつける光の当て方しか知らないわけ。無色の光を作ることができないので、ずいぶん苦労したという話を歌舞伎の照明の専門家の人に聞いたことがあります。
新さん そうかもしれない、ガイジンの場合は暗がりの中でスポットを当てるという感じなんでね。だから色がついてないと困るのかもしれない。歌舞伎は前面にパッと浮かび上がらせる光の当て方だからね。
運営者 だから寿司屋の照明というのは歌舞伎の照明みたいな感じがするんです。
新さん そうだね。スポットライトじゃないな。
運営者 だから寿司屋はまず明るくて、古いんだけれどもどこもかしこもきれいに磨いてあって、清潔感があって、主人が客をめいっぱい愛想良く迎えるというのが理想なんだけれど。
新さん でもさあ俺、「すし好」みたいなリーズナブルで明朗会計のブティック寿司屋で嫌なのは、「いらっしゃいませー」という言い方がコンビニと同じ感じだと思うんだよ。
雅子さま お客さんは多分ファミリーレストランに行くのの←トルツメ延長で行ってるから、店の側も意識もそうなんでしょうね。
新さん 回転ずしよりちょっと上に行っている感じ。
そう言えばさあ、築地の場外にマグロ専門の回転ずしがあるの知ってる。面白いよ。回っているのがマグロだけ。づけ丼もうまいし。
運営者 行かなきゃ。
新さん メチャ高い寿司屋はどんどんなくなっていくかもしれないけれど、まあパフォーマンスを愉しみに行くと考えれば生き残るんだろうね。
もともとは、屋台で立って食べていたわけじゃない。オレ広島出身なんだけど、子供のころはまだあったよ。川のほとりにそういう寿司屋の屋台が出るわけ。子供のころ映画見た後にオヤジに連れて行ってもらって、そこですしを食べるというのが最高のぜいたくだった。それがすしの原型でしょう。
運営者 そうですね。
新さん 江戸のファーストフードなんだよ、「ちょっと握ってくれ」という感じでちょっとつまんで。
運営者 全部マグロだったらづけにして、穴子やコハダなんかもすでに加工されていたわけです。
運営者 それでいうと、最近行って満足したのは新橋の駅前ビルの中にある鶴八という店があって、ここはいい仕事してるんですよ。
新さん あそこはいいよな。
運営者 神田にあるところから分かれたみたいで、神田にも鶴八という店はありますけどね。
雅子さま 江戸前で、「仕事してある」という言い方が不思議でしょうがなかったんです。「これ仕事がしてあるから」と板さんが言うので、小さいころは「何言ってるんだろこの人たちは、みんな仕事してるのにどういうことなんだろう」と思ってましたよ。「当たり前のことなに言ってるんだろう」とおもしろがっていた。