■ 代理店
もたれ合いから自立した関係に
クライアントも代理店もお互いプロにならねば(1)
新さん 代理店の仕事、変わってきたと思うんだよね。
これまでは、15%のマージンをもらって、その中で「あらゆる事をしましょう、全部しますよ」というのが今までのサービスだったわけ。ところが今は、「このサービスをしたからこれだけの料金ください」というフィー・ビジネスになってきた。クライアントにとってはどちらがいいやり方なんだろうか。
雅子さま 前者は日本型で、後者は欧米型なんですけどね。
新さん 欧米流の考え方になれば、「やったかやらないのか分からない事に対して金は払えない。サービスされた分に対してだけ払いたい」というのは、これはこれで合理的なんだよね。
例えばマーケティングしたら幾ら、プランニングしたら幾ら、何時間働いたから幾らというふうに積み上げていって、トータルで幾らいただきますということだね。 制作はCRブティックに頼んで、媒体だけメディアエージェンシーに頼むというパターンもありうるわけだ。
今まではワンストップサービスだった。電博に頼めば全部できたわけ。ところが、インターネットの時代になると、ひとつひとつのサービスについて選択肢が非常に多くなるわけだ。だから「マーケティングはここ」、「PR戦略はここ」、「クリエイティブはここ」、「媒体を買うときはここ」というふうにクライアントの方がいくつかの選択肢を選べるようになる。選択の幅が広がったわけ。
逆に言うと代理店としては選択の幅、選択肢をいっぱい持って、「うちにはこれもあります、あれもあります、どれがいいですか?」といえばいい話。
だから今までは百貨店だったわけだけど、今度はショッピングモールになって、各フロアごとにいろんなブティックが入るというふうに店構えが変わるという感じなんだろうね。
運営者 客は「いかにも高そうなブティックだな」と思って入るんだけど、「まあこれぐらいのクオリティーのものならこれぐらい出してもいいや」と思わせればいいわけですね。
新さん 「そのかわり媒体を買う部分は地下のスーパーでいいか、紀伊国屋じゃなくてもいや」と。
雅子さま ただ、クライアントの方も、いろんなベーシックの知識が必要ということになってきたということですよね。←トルツメ
運営者 そういう知識はクライアント側は持っているんじゃないんですか。
雅子さま でも今までは、「ここに任せればOKだ」という感じでみんな代理店に安心して頼んでたんですよね。
運営者 丸投げしていたわけか。
雅子さま そういうふうにして今の日本は発展してきたわけです。それが許されなくなったというわけではないんだけれど、他の手段をとることもできるようになったわけですね。
運営者 僕の視点から行くと、クライアントの側がそういうふうにして丸投げして済ませるというのは仕事に対する明らかな責任放棄だし、また自社の中にノウハウがたまっていかないから前進がないわけですよ。付加価値がつかない仕事というのは、イノベーションがそこにありえないしダメですから、そうするとその関係を代理店と続けていたとしても、あまりその会社にとってプラスにならないような気がしますよね。
そういうことをやっていたということの方が僕にとっては驚きですけど。
新さん まあ、エネルギーをつかわなくて済むから楽だったんだろうね。
雅子さま それと、そのほうが結果もよかったという点があると思う。
運営者 それはもちろん、クライアントの依頼を受け取る代理店の方がしっかりしていたと言うことができるでしょうね。