■ 代理店
もたれ合いから自立した関係に
クライアントも代理店もお互いプロにならねば(2)
雅子さま 数年前、欧米で「これからの代理店はIMC (統合マーケティング)だ!」なる動きが出てきたときは「なんだ今までの日本じゃん」と笑ってしまいましたが。
新さん ブティックがいっぱいできると、選択するクライアントの側が結構大変なのよ。それは発注する側にリスクが発生するということ。
運営者 だけどそれは当然のことで、そうやってはじめてパートナになることができるわけですから。
雅子さま ちょっと違う方向に話を持っていくかもしれないけれど、欧米と日本では根本の文化が違うと思うんですよ。
日本では障子や襖の文化ですからね。それはどうにでもレイアウトを変えることができる仕組みなわけです。外国って違うでしょう、壁がしっかりしていて、石の壁だからどうしようもないわけです。そういったことが多分世の中のありとあらゆる面に現れていて、欧米では家を造る前にディシジョン・メイキングをしっかりしなければならなかったんだと思います。
新さん 単機能なんだよ。
雅子さま でも日本は障子は外してしまえばいいし、都合が悪くなれば、襖も外してしまえばいい。
新さん マルチなんだよ。
雅子さま だから何でもできたし、さっきの食事の話じゃないけど、幕の内弁当みたいにトータルでみれば何とかなる。1皿1皿きちんと作って出てくるわけではなくても……、という気がするんですよ。
運営者 あのね、小笠原流礼法で障子を開けるときってね、まずちょっと高いところからちょっとだけ開けるんです。それによって、部屋の中にいる相手が「あっ、襖を開けるな」と気がついて居住まいを正すことができるんですよ。
その次に手を降ろしてきて、中ぐらいまで開けるんだけれど、まだ自分の体が全部入るほどではないんですね。これは何をしているのかというと、「相手が何をしているのか」ということ見ることができるくらい開けるということです。
しかる後に体を入れて入って行けるくらいまで開けるわけです。そのように障子を開けるだけでも3段階の過程がある。
新さん 相手がお取り込み中だとと閉めちゃうんだね。
運営者 そうですね。それで、このような規律がなぜできたのかというと、そういった規律がなければ襖の文化は成り立たないからなんです。
しかし今もう、この襖の文化が崩壊してしまっているのに……、つまりどのくらい崩壊しているかというと、欧米型の石の文化の方がまだ馴染みやすいというくらいに日本人の意識が変化してきているんだと思うんです。
雅子さま ということはそれに合わせてビジネスも変わっていかなければならないということだな。
運営者 そうそう。いままではたとえクライアントが代理店に仕事を丸投げするにしても、ちゃんと考えてやってたんだと思いますよ。それはたぶん規律が生きている時代にやっていたことなんです。
新さん 今でもやってるんじゃない。部屋に入るときにこんこんとノックして、「今、いい?」と聞いたり、携帯電話にかけて「もしもし、今ちょっといい」なんてね。
運営者 その通り。それは何をやっているのかというと、相手の都合や相手のことを思いやっているということなんですね。だから、それがサービスの基本なんです。
ではね、今まで代理店が提供してきていた15%の口銭にすべてが含まれるというサービスが成り立っていたのも、実はお互い、ちゃんとした大人であって、丸投げするにしても規律があったということだとだったんだと僕は理解しているんです。 それではどちらかか規律を外した時点でパートナシップが成り立たなくなってしまう。そうしたら石の壁にした方がいいじゃないかということじゃないんでしょうかね。崩れていると思うんですよ。