■ 代理店
もたれ合いから自立した関係に
クライアントも代理店もお互いプロにならねば(3)
運営者 企業が代理店にいちばん求めているサービスってなんだと思われます。
新さん 俺はね、パンパード・サービスだと思う。
運営者 じゃあ過剰なサービスになっちゃう可能性がありますよね。
新さん そうなんだけど、僕らが躾られたのは、お得意に行って話をするときに、「おたく」はと言わずに「うちは」と言うわけ。主語が違う。先方もひっくるめて「われわれは」という話法を使うわけ。「あなたたちは」とは言わない。
運営者 相手のことを考えているんだけれど、相手を包み込むように相手の立場になり代わって考える、だからそういう形のパートナーなんですね。ある種のパートナーシップにはなっているんだけれど、クライアント側が依存する傾向が見られるように思います。
新さん 「われわれは」という言い方をしたときでも、「相手の仲間」という意味なんだ。
雅子さま それはちょっと私たちの世代の感覚とは違うかもしれない。「われわれは」、とは言いませんね、「おたくはこうした方がいいのではないですか」という言い方をしている。
運営者 そこのところは整理するとそんなに違っていることを言っているようには僕には思えない。パートナーシップを組んでいることには間違いがない。ただ客観的に見て言っているだけということです。
新さん だけど、「あなた」と「私」と言っている限りにおいては、それは対立しているわけだし、「使われている立場」「使っている立場」というのがはっきりしているよね。
僕らの世代だと「うちは」という言い方をして相手のことを含めて自分たちの立場を表現していたよ。
運営者 それは、日本人が外国に行ったときによくWe Japaneseといってしまうような感じですね。私がなくて、日本人全体の中に入っているという共同関係が日本人にはあって、それはそれで以前は機能していたんです。それに近いことなのかな。相手が規律をもっている限りパートナであり続けられたわけです。
新さん だから、辛口のこともちゃんとクライアントに言います。それはわれわれは対等なパートナですから。
運営者 では、クライアントとの関係を表現するときに、「うちは」「われわれは」、と言わない立場というのはどういう立場なんでしょうか。
新さん それは要するに、お互い利害関係を持った対等なパートナーなんですよということを相互に認めたときに、「あなた」と「私」になるんだと思うよ。
運営者 面白い。一方的な依存関係が解消して、一段階進化しているわけですね。
新さん 僕らの時には、「われわれ」と言うことによって、相手と同化して「一緒に苦労しようね」「一緒に汗をかこうね」という感じだったんだけど、それよりもちょっと進化しているのかもしれないね。
運営者 各々が自分の仕事をきちんとやって役割を果たしたときに、できてくるものはさらによくなるはずだというそういう信念に基づいた関係という感じですね。
新さん そこでやっぱりサービスの質がちょっと違ってくるのかな。
運営者 それはだって、最初の話につながりますよ。つまり、代理店としてはそういう関係を作る場合において、客もプロになってほしいはずです。