「旧日本国」は瓦解、内戦寸前
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 そうした今までの日本のルールを否定するまったく新しい考え方が、90年の初めから今日の10年間にかけて、ずっと世の中に浸透していく過程があったんですよ。少なくともB&Bではそれを追究していた。それはバブル崩壊と軌を一にして、バブルが崩壊して不良債権が膨張し、大企業は何もできなくなって徐々にリストラを始めて、そのうち95年12月に住専への公的資金導入が決まって、97年の11月に大手の金融機関が潰れて、その後も地方銀行や信金がなどがいっぱい潰れて<<。
飯坂 まあ97年の11月は三洋証券をつぶしちゃったから、拓銀も山一も連鎖的に潰れてしまったということであると。
運営者 なんか最近『通貨が没落するとき』(講談社)というベストセラーを書いた木村剛さんという人がそういうことを書いていたりしましたが(笑)。
飯坂 それは結構共通認識だと思いますよ。
運営者 そういうふうにしてリストラクチャリングが進み、「失われた10年」などと総括されている。地方公共団体もこれ以上公共事業が受け入れられないようになってしまった。今までは地方銀行が地方債を買っていたわけですからね。それはもう買う余裕はないと。今までは財政のツケを金融=国民の貯蓄が払っていたわけですよ。ところがその構造がもう成り立たなくなってしまった。従来型の秩序維持の構造にはとことんガタが来ているわけです。
飯坂 そうですね。地方債などは格付けをつければ投資不適格になるようなところはたくさんあるでしょう。
運営者 しょうがないでしょうけどね。
そうすると、今までは一票の格差をそのまま放置して、都会から得た税金を地方へ所得移転をするという構造に乗っかって、自民党が政権をとり続け資金分配を行ってきた。そしてまた地方で投入された公共事業費は、中央のゼネコンに回ってきている。そういうふうにして支えられている「旧日本国」の産業構造が戦後確立していたわけだが、この10年間でそれは崩れてしまった。
景気対策をするというのはどういうことかというと、「旧日本国」にカンフル注射を打つということだったわけです。では果して「このままずっと旧日本国で行くのか」といったときに、「いやオレは旧日本国は嫌だ」という人たちの数が徐々に増えつつあるという事実がある。
都会で民主党が勝つということはそういうことです。「そういう対立の図式が先鋭化することが果たしてよいのだろうか」という人もいます。ほとんど内戦ですよ。聖バーソロミューの虐殺か何かがあってもおかしくないと。カソリック対プロテスタントみたいな状況に近づきつつあるわけです。
飯坂 でも黒船が来て長州征伐があるような時だったら、まあしょうがないじゃないですか。フリクションがあるのは。
運営者 だから僕らの世代はどちらかというと「フリクションを起こしたい」と思っているわけです。それともう一つはやはり「団塊はぎりぎりで年金に間に合うかもしれないけれど、われわれの世代は払い込んだ年金は返ってこないよね」と。
飯坂 年金はナントカするんでしょうけど、その分は税金で払うことになるんでしょうね。もう「過去の蓄積で払ってきた分というのは返ってこないだろう」という気がしますね。できれば保険料を払いたくないな。
運営者 まあ当然の心情ですよね。