オープンな場の作り方
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 ところで、今度はまたネットワークの話なのですが、ネットワーク対応型の人間というのは、昔の偉ぶりタイプとは違って、「オレがオレが」という必要はなくて、「自分に足りないものは誰かに加えてもらえばいいじゃないか」という価値観を持っている人たちなんです。ここが一番違う点でしょうね。
ですから、自分を通す必要というのは全くないんです。自分はあくまでも「場」の一部分とか、「場」を提供しているだけとか、「ネットワークの結節点となる」ということでいいんですよ。実はそれが一番利得を得られる地位なんです。一番最初は、その結節点をどのようにつくるかというコンセプトの積み上げが必要なんですが、いったんそういう仕組みをつくれば、後はその中にどういう人が来てくれるかということをマネジメントしていけばいいわけです。
僕はこういう「場」づくりは、どんな集団においても可能なことだと思うんですよ。
ただ、このオープンな組織は必ずつぶれるんです。いつか潰れる。うまくハンドリングをすればかなり長持ちすることはしますが、でも「場」の運営というのは難しくて、何かこう、その場に相応しくないものがいっぱい入ってきて、それで成り立たなくなる瞬間が来るんです。そうすると、「もうこれはやめましょう」という以外にはなくなってしまう。
ですから僕がB&Bでやっていたのと全く同じパターンのことをビットバレーの運営者たちは経験して行ったんだなあというのがよくわかりました。
それはあまりにも近似しているので、僕自身は非常によく理解することができましたね。
飯坂 そうだね。だから、そうなっちゃうんですよ。
運営者 ただあっという間に、あれだけ人が集まって、ビットバレー自体が一般名詞化してますから、クリティカル・マスを超えているわけです。ですからその後は、べつに彼ら自身が主導しなくても、ビットバレーという枠の中でやってくれれば、ビットバレーの看板を背負ってやってくれるような人が勝手にやっててくればいいだろうという考え方ですね。メーリングリストも、5000人も参加者がいる無理な運営じゃなくて、ばらばらにテーマごとにやっているみたいですよ。
取材してよかったなと思うのは、そういう形でのネットワークの作り方、それによって20人もいないような若者が集まって、ネット上でコンセプトを積み上げることによってあれだけのことをやってしまったという事実を確認できたことです。
飯坂 確かに革命ですね、それは。奇跡に近いですよ、日本では。