自分の能力を生かすチャンスをもらえる「場」
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 しかし、日本のネットベンチャーで、本当に価値のあるものというか、今までにないもの、だれにも見えなかったものをつくって、それを実現した会社って、どれだけあるのかと思うんですけど。「ネットベンチャーだ」「ネット革命だ」と言って浮かれるのはいいんだけれど、そこのところで、アメリカのシリコンバレーと比べるとクオリティーの部分ですごい差があると思いますが。
運営者 それは事実。この春までは、ビットバレーと言ってれば、カネはいくらでも降ってきたし、浮かれていたのは事実なんですけど、ホントのことを言うとちゃんとした高成長・高利益のモデルを持っている会社というのは10社とか、そんなレベルかもしれないですよ。ただまあ株式公開できれば、そこそこ金回りがよくなるという現実があるから、それで救われる会社というのが30~40社あるんじゃないでしょうか。ただまあ、そういう会社は成長しないから、ピークが来るのが早くて会社としてはつまらないでしょうね。
飯坂 株式公開をしても、それは未来の収益に対する投資家の期待がキャピタルゲインになってくるわけだから、その期待に応えるためには、「自分でビジネスモデルを作れないんだったら、新しいビジネスモデルを持った会社に投資するしかない」ということになりますよね。ところが、そこが投資した会社も同じような考え方でやっているんだとすると、前の会社は運良く投資先の公開で回収できても、次に公開する会社はまた次の投資先を捜さなければならないと……。
運営者 ネズミ講だということですね。そういうことになるでしょう。それでもまだね、ネットベンチャーが出てきたということは僕は非常に希望が持てると思います。それによって高成長・高収益のビジネスモデルを作ることができる会社ってのも、現実的に存在するんですよ。それはホントに、才能のある事業家たちですよ。
まあ当分、ネズミ講をやっていくのもいいんじゃないんですか。どうしてかっていうと、エンジェルがいるということは、少なくとも変化を促進し続けることができるということですから。
ずいぶん期待が集まっているようですが、ネットベンチャーは世の中を変える主体である必要はまったくないんですよ。そんな効果じゃなくて、繰り返しになりますが、ネットが普及することによって人間が変わっていくはずだと思うんです。そういう新しい意識や行動様式を持った人が集まって、世の中全体が変わっていくんだと思います。
飯坂 そうですね、世の中は人間でできているので、人間が変わればある日突然民主党が大勝してしまうということがあるかもしれませんね。
運営者 そういう意味では、ヴェルファーレでやったようなビットバレーの大きな集まりはなくなったけれど、彼らが作ったコンセプトというのはまだ生きていると思いますね。
飯坂 でも、その場自体は、「素晴らしいもの」「今までに世の中にないものを生み出す」ための十分条件ではないんですよね、多分。スピードは得られるのだろうけれど。そこでできたものが本当に素晴らしいものかというと。
運営者 あくまで「場」だからね、その場に頼ってちゃいけないんですよ、そこに参加する人間は、自分の能力を生かすチャンスをそこでもらうだけですから。それが活かせるかどうかは、今度はそこに参加する人間個人の力量になってくるんだと思います。「その場に居る」ということだけでは、何の意味もないわけです。ここを勘違いしている人はまったくダメなんですよ、多いんですけど。ただそこに参加するチャンスがなければ自分の能力を生かすこともできないということですよ。少なくともスピードは得られないし、カネも情報も得られなかったかもしれない。
僕はB&Bは、本来的には「そういう場にできるんじゃないかな」と思っていたんですけれど。