われわれの世代は、誰に負い目を感じているのか
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 ところで、日本のエスタブリッシュメントに対し、われわれの世代が何かを返す義理があるのかと考えた時に、何かわれわれは負い目を感じているでしょうか。また、その対象は。
何かを世の中に対してやらなければならないという1つの理由に、「借りを返さなければならない」ということがあります。養ってもらったという負い目があるのならね。社費留学をさせてもらったら、とりあえず会社に何年かいなければならないなぁとか(笑)。
僕が会社の中で派手に立ち回ったのも、悪いけれどもぼくは会社に食わせてもらったという意識がないからですよ。入社1年目から収益性から考えると超安月給でバリバリ稼いでいたし。
でも反対に「養ってもらっていた」という負い目を感じた社員は、会社にいきなり取り込まれていってしまうのかもしれません。
飯坂 普通、入社1年目は、とにかくお荷物でしかなくて、会社に食わせてもらったという意識はあるだろうし、酒は全部奢ってもらうし。
運営者 体育会的家族主義ですよね。これが、MBAを取ってアメリカの会社に入るということになれば、負い目なんかないわけじゃないですか。10万ドルもかけてMBAを取ったのだから……。
飯坂 インベストメントとリターンの関係をシビアに追求することになるでしょうね。
運営者 組織に対する関係性が端から変わってくることになる。
会社としてみれば、入り口でそのような負い目を感じさせることができるというのは都合がいいことだったのかもしれません。社会に子供として入っていって、インキュベーターの中で育てられる過程を経ることで、組織に絶対に反抗しない人間をつくっているのかもしれません。
ところが、世代的に考えて僕らの世代は実感として、誰かに借りがあるのか捉えようがない。バブルを起こして、その中で踊ったのはわれわれではないし、過去に積み上げた、本来であれば株主に帰属する含み資産を、利益を出すためやリストラ原資として費消してしまったのもわれわれではない。
飯坂 少なくとも、育ててくれた親に対する負い目はありますよね。
運営者 われわれの世代にはね。でもどうやら最近はそれもないらしくて、親を撲殺するのが流行っている。
飯坂 まぁ、親はどこからか金をもらってくるだけで、見た目は格好悪いし、話をしても大した話はしないし……。しかし、いくらプレゼンテーション能力に欠けるとしても、15や16のガキに「尊敬できない」なんて言われるというのは、やっぱりおかしいんだよなぁ。
運営者 まったくです、まったくです。それはあまりにも見識がなさすぎます。でも現実にそうなっている。だって経験から考えても、話にならないですよ。もし話すに足る人間であれば、私だって会社を辞めずにすんだと思いますね。もう少し独立した個人が理性に基づいて価値判断を行い、合議に基づいて戦略的に行動するということが行われているはずなんです。
飯坂 そこまでいかなくても、いいことであれば「それはいい」と認めることができるはずなんですけどね。
運営者 ところが今は、いいことも悪いことも思考が停止してしまっていて判断できないわけです。だから、何を言っても反応が返ってこない。まあ、そもそも全員を相手にすること自体が間違っているのですが。