まず「どうあるべきか」を考えろ
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 困ったちゃんである、何も知らず会社にぶら下がっている上の人たちをどのようにして退場させるかが問題ですね。
運営者 それは、下の世代が団結するしかない。株主は無力だし株主資本主義でないわけですから。
社員が団結するしかない。万国の新日本人よ団結せよ。団結ガンバロー!
飯坂 まず、「どうあるべきか」ということを考えるのが先でしょうかね。
運営者 それを先に規定することができれば随分楽だと思うんです。ところがそれが一番苦手な文化なんです。
この前、「IT」という言葉を95年の7月号で記事タイトルに使ったと申し上げましたが、僕はEVAについては96年の1月号、コンピテンシーモデルについては、97年の4月号で取り上げています。いずれも、つい最近になって人口に膾炙した概念です。やっぱりちょっと早すぎたわけですが。まあ「プレジデント」では、いつやっても、どう取り上げても、やっぱり売れないということに変わりはないでしょうけれど。
それで、今している話は、こうした概念に近いんだと思います。コンピテンシーモデルというのは、「あなたの仕事はこれですよ。この仕事に必要な能力は、例えばリーダーシップであり対人影響力であり、概念化能力ですよ」と。その各々の能力で、ハイパフォーマーはこれくらいのことができるし、だめな人はこの程度しかできないという仕事のレベルが何段階かに分かれていて、「あなたはここまでしかできていないから、ここまでできるようにがんばりなさい。そうすればこのくらいの給料を払えます」。これを先に規定しておいて、それに見合った人を社内で見つけたり、外から連れてくる。
就職するときに、「あなたに期待されている仕事や、達成すべき目標はこれです」ということで、ジョブ・ディスクリブションやら職務権限規定の一歩先のものが要求されているということになるでしょう。
日本企業の中で、そうした決め事をつくることができるかというと、ぜんぜんできないですよね。
飯坂 日本企業の業務目標設定はあまりにも漠然としていて、上司から与えられるのですが、たいがい「こんなものどうやれっちゅうんじゃい」という話ですよ。「それでは、これをやるためにはこうすればいい」という提案をしたら、それを受け付けてくれるかというとそんなことは全くない。
運営者 なんだかわからないけれど、上から「なにしろやりなさい」という命令が降りてきて、それを前にして右往左往するというのが正しいサラリーマンの生き方なんですかね。
飯坂 銀行の支店では、役にも立たないようなカードローンの獲得のノルマが降りてきて、カードの発行や事務処理のコストを考えたら、どう考えても赤字を増やすだけなのに、上から言われればやらざるを得ないし、支店長としては行員のケツを叩くしかない。
それが銀行の収益にどれくらい寄与するかということは、ヒラでも考えれば分かることですよ。「こんなのやっても、費用対効果では意味がない」とみんなわかってはいるんだけど、それを言っちゃあいけないんです。旧日本軍の変な作戦計画とおんなじで、「これちょっとやったらなまずいかな」と思っていても、上からの命令は無批判に通して大失敗をしてしまう。そして失敗に学ばず、何度も同じ過ちを繰り返してしまう。
運営者 そういえば、海軍がミッドウェー作戦の前に、シミュレーションをやったんだそうですよ……。