報われず、理解されない新日本人
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 それにしても戦略なし、思考停止の会社が多いですよね。
運営者 自分たちのよって立つ基盤が、顧客数ではなくて、別の何ものか、ありていに言うと、自分たちの生活自体が目標である会社ということですよ。だからモノなんか考える必要がないし、戦略立案の必要もない。
飯坂 そしてまた外部にそれを支えてくれるような力があった。
そういう中に入って、流れに逆らわずぬくぬくと生きていくと。
運営者 それは旧日本国の人たちにとっては効用があったことなんですよ。
そうした中で、なんか難しいことを言って、せっかくうまくまとまっているものを、「ほんとうはこちらの戦略が正しい」などと騒いでいる奴というのは、抹殺すべき対象ですよね。
飯坂 当然ですよね。
運営者 今現在多くの、われわれの仲間がそういう状況にはまっていると考えてよいでしょう。そして彼らは報われないし、報われないどころか理解されることすらも決してない、彼らが正しいにもかかわらず、理解されることはないのです。
飯坂 MBAというのもそういう意味では損ですよね。そういうレッテルを張られることによって何を言っても、「まあ彼はMBAだから」と棚上げされてしまうところがある。普通の人たちの中から新日本国型の発想が出てきた場合にはどうするかというと、それもまたMBA系の方に集約してしまって、ガス抜きにしてしまうわけです。
運営者 私は別に、無責任に会社を辞めたわけではないんですよ。最後まで立て直しの努力をして、実際にそれを実行して、結局それでも中に残れないという判断をしたわけで、それはそれでいいんだけど、やっぱり今になって思うのは、その努力をだれも理解してくれなくて、あいつはただのうるさいデブだったとしか思われていないというのは、あまりにもむなしものがありますよ、自分があそこの会社で過ごしてきた12年間に対して。信じられないものがありますよほんと。これはね、自己愛の裏返しでしかないから、ぜんぜん威張れることではないんです。だけど僕だって、木の股から生まれた訳じゃないですからね。時には、天を仰いで嘆きますよ。
飯坂 それじゃあ、月刊ビジネス誌とか新雑誌をつくって対抗するとか。
運営者 そういう話は、実際に大手出版社からいただきました。けれど、もう僕はあんな思いをするくらいなら、自分を人に理解してもらうという努力を捨てた方が早いなあと思ったんです。まったく絶望的ですよ。
飯坂 でも、共通基盤を持たない人に理解してもらうというのはそもそも無理ですよ。それは、その見切りを早くつけるべきだったでしょうねぇ。
運営者 でも見切りをつけることはできなかった、なぜなら僕は「プレジデント」が好きだったからです。ここがねえ、僕の最終的な泣きどころだったわけです。
雑誌というのはね、それだけの吸引力があるからこそ、あれだけ多くの人があんなつまんない雑誌を買っているわけです。そのくらい強いブランド力がある。ブランド力さえ残っていれば、立て直すことは可能だと私は思っていましたし。だって、無意識に買っちゃうわけですよ、週刊文春というだけで。それで読んでみて、「なんだやっぱりつまんなかった」と思って安心するわけでしょう。そういうものなんです。そこに僕自身も絡め取られていたというのが事実でしょう(笑)。
単純に「インターネットぼやき」をやっているだけのサイトと思われるとまずいので、言い直しますと、おそらくこれから、多くの旧日本型企業にいる人間が私のような目に合うはずです。外資系にだってそれはある。外資の場合、みんな自分のことしか考えていないから、自分が開拓してきたノウハウを組織の中に落とし込もうという仕組みはそもそもないわけですから。
飯坂 でもそれは、トップが能力があればそれでもうまくいくんですよ。トップ次第なんです。