会議が苦手な社会では代議制度は成り立たない
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 やっぱり飯坂さんは民主主義に毒されている。
飯坂 いや、そうじゃないよ。だって外資系企業は寡頭制そのものだもの。
運営者 集団での狩猟のためには指導者は少なくないとね。「俺は今日はこっちに行きたいんだ」、「いやオレはこっちだ」と話がまとまらないと、狩りにならないないもの。
でも、寡頭制を機能させるためには、制度内改革を行う仕組みもちゃんとつくっておかないと、変な人間が最終的に決定権者の地位につくことになったらまずいですよね。ベネチア共和国の十人委員会であれば、彼らは決定権者としての地位を手放なすことなく、そうかといって独占することもなく自分に関係づけて、国家をコントロールし、ロードス島の陥落やら、コンスタンチノープルの陥落も乗り切ってきて、最終的にはナポレオンの時に対処能力を失って、千年近い国の歴史に終止符を打ったわけです。
飯坂 それはしかし、都市国家という規模の国だからできたことではないでしょうか。
運営者 ピンポーン。シンガポールもそうですよね。
これが、旧来型国家で機能するかと言ったらわかりませんが、しかし民主主義だって機能していないという事実がある。それは、民主主義ですらないわけであって、民度が低ければ自治は成り立たないと言ってしまえばそれだけのことなのです。
民主主義がだめだから寡頭制にしろというのは乱暴ではありますが、しかし実際に代議制度なのに意見集約のノウハウがない。へたくそなんだと思います。
日本ではとにかく偉いやつが言うことが正しくて、会議はそもそもするだけムダ、会議で発言してはならないという国なんですから。これでは民主主義は無理でしょうと。例えば若きチャーチルが英国議会で演説してみんなを唸らせたなんてことは、この国では不可能でしょうね。そうするとどうやって指導者が輩出されるのか。500人もの人間が顔つき合わせて議論するなどということはそもそも不可能なわけでして。じゃあ委員会にするとどうなるかというと、結局政府委員がコントロールしているわけでして、これは改革後の新体制でも実質的には変わらないでしょう。
飯坂 代議制度と言いながら、議論できないんだったら、単なる国会議員制度ですよ。
運営者 確かにそうかもしれない。こんなの付き合いきれないですよ、ほんと。じゃあ自分ができることは何なのか。日本組織の中では、自分が今いる組織の中でもっと合理的に行動するようにみんなを説得しようと思った瞬間に干されてしまうわけですから。国会の中でも、新日本人の立場はつらいよ。