現代のトレンドと乖離した「日本的経営」
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 じゃあねえ、例えば、天孫降臨じゃないけれど、非常にマネジメント力のある人がある企業にTOBをかけてきて乗っ取ったとして、その指導者が日本人かガイジンかわかりませんが新しくやって来たとして、「その会社に残っている旧日本国人はそこで変身しうるか」、と考えたらどうでしょうか。
運営者 うーん。日産自動車のケースを見てみましょう。日産では何が起こっているかというと、まずアメリカの現地法人から優秀なアメリカ人がどんどん逃げている。フランス人が上にやってきましたからね。(笑)
飯坂 それは、業界を限らずそうでしょう。
運営者 まあ、変わらないですよね。これも米倉先生がおっしゃっていたのですが、自動車産業というのはやはり今でも日本のリーディング産業のひとつなわけですがその大手5社のうち、日産とマツダと三菱の3社は今や外国人が経営をやっているわけです。そんなところまで来てるのに、まだ何かガタガタ言うのかということなんですよ。日本的経営の優越性がどうこうという議論は、もう既に終わっているんです。
飯坂 問題なのは、「日本的経営が優越している」ということ以外に、われわれは未だに語るべきことを持っていないということではないでしょうか。
運営者 長期雇用、年功序列、企業内労働組合など、いくつかの日本的経営の特徴というのがありますが、それってストラテジーとは関係のない話じゃないですか。今日では、実はビジネスの本筋とはみなされないところのものが抽出されて、あたかも日本企業の優越性のように言われているというのはあまりにおかしい。
運営者 まあこれらも、1940年代に戦時体制をつくるために整備されたものなんですけどね。
飯坂 日本的経営は、理由があって、戦略的にそのようにしたわけではなく、たまたまそうなっていたわけですね。
飯坂 枝葉のことをどうこう言っても始まらなくて、要はすべてにわたって「まじめにやれ、もっと勉強しろ、勉強したことを実践せよ」ということに尽きると思います、私は。
運営者 旧日本国人でも多少勉強すると、「ああ経営には、ストラテジーが必要なんだ」とか、「ナレッジマネジメントは役に立つんだ」とか、あるいは「コンプライアンスというものがあるらしい」ということが徐々にわかってくるということでしょうか、三菱自動車の人たちにも。
飯坂 少なくとも差異があることはわかりますよね。そしてその次は、「コンプライアンスは何のためにあるのか」ということを考えなければなりません。
運営者 「そうしていれば、こんなことにはならなかったのに」という反省ができると。雪印も、三菱自動車も、あれは危機管理ではなく、コンプライアンスの問題ですよ。
危機管理というのは自分は悪くないけれどひどい目にあったときにどう対処するかいう話であって、あいつらは自分が悪いんだもん。悪くないと思っているのだとすると、それはまさに組織の中だけに通用する論理が、デファクトから大きく外れているだけの話ですよ。
飯坂 でも、「コンプライアンスというものがあるらしいから、うちもやってみよう」なんて言って導入するのでは効果は半減なんですよ。そうでなくて、なぜそれが必要なのかということを飲み込んだ上で導入しないと。
運営者 それは、もっというと「自分が仕事をするということはどういうことなのか」、単に自分がカイシャで時間を過ごすということだけではなくて、ノルマを達成するということだけではなくて、自分の仕事は「顧客につながり社会につながり大きな広がりを持っているんだなあ」と言うことを認識しなければならないということだと思うんです。