ガキの中にも「ビジネスの萌芽」があるはずだ
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 若いときは時間が無限にあるという感じがするけど、しゃがんでいる連中は、現実に戻ると非常に貧弱な自分が見えてくるわけです。多少腕力が強かったりけんかに強かったとしても、そんなものは何の役にも立たないし、それこそヤクザの世界に入ったって、腕力だけでは限界は見えている。「でも、それじゃ何ができるの」となったときに何もできないということは、彼らもうすうす気がついていると思います。
「だけど、それじゃ自尊心はどうなるの」という話で。だから彼らは必然的に、自分たちの周りにいる弱い連中なり、仲間なりとの相対的な関係性の中で、自分のアイデンティティーを満足させるということになるでしょう。
運営者 ここがまさに運命の分かれ道!!
そのときに、自分の仲間を搾取してそこから利得を得るという方向に行くか、あるいは仲間を組織してみんなで利益を得るという方向に行くかというのが大きな道の分かれ目なんです。
もし仲間を組織する方向に行けば、これすなわちベンチャーなんです。本当はヤクザの組織だってそこから始まっているはずだし、ゼネコンだって江戸時代にゴロツキの集まりを人足として組織するところから始まっているわけです。まあその文化が今に繋がって不良債権を抱えることになっているのかもしれませんが。で、せいぜいそれと同じようなところからスタートしてる大企業だって少なくないわけですよ。
そこには確実に「ビジネスの萌芽」があるわけで、それを続けていくうちに経営能力のある人間は、ちゃんとした立派な経営者になるんです。どうしてかというと企業市民としての社会性を身につけることができなければ、会社は大きくなることができないからです。そこにビジネスとか、人が人を束ね仕事をつくっていき社会的な存在にまでなっていくということの恐ろしい真実があると思うし、またこれ、素晴らしいことだと思います。
人間がそもそも何かやりたいという欲求を持っていて、「どうすれば生きることができるか、どうしなければ生き残れないか」というのを組み合わせたところの必然の結果がビジネスなんです。それをつくることはゴロツキの中からでも可能なんです。人が集まってさえいれば。
じゃあそれを誘導するものは何かというと、これこそが文化の役割なんです。もしその文化が崩れているのであるならば、それを復興して多くの人々を誘導する核になるものを作るのはインテリの役割ではないでしょうか。
飯坂 今は目標がないですからね。戦後なぜアメリカに付いていこうと思ったかというと、アメリカがとてつもなく豊かで、チョコレートをばらまいたから。
運営者 「ああ、こいつらみたいになりたい」と。
飯坂 アメリカ人が人間をよく分かっていたということなんでしょう。
運営者 アメリカは、自由な取引を行っていく中で人間の欲求を満足させるシステムをつくることに成功していったわけですね。逆に日本は抑圧的なシステムですから。
飯坂 で、物質的な豊かさは達成されたけれど、今度は精神的な豊かさについてどこがどう足りなくて、何が必要なのかということを明確に意識することができないわけです。
運営者 中途半端に満たされていますからね。