「市場主義」、「競争」について
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 次はですねえ、「市場主義」とか、「競争」ということについて考えたいと思います。
本邦には、「市場原理主義」というすごい言葉があって、イスラム原理主義とほぼ同列の扱いになっているんですね(笑)。 そのように考えているサラリーマンは、確かに数多いと思うんです。「とてもついていけない」と思っていて、排除してしまおうという……。
飯坂 ある意味では、正しいと思うけど。
意識の上で、市場主義にちゃんとついてきている人は多くはないでしょう。「市場主義を貫徹するためのルールがまだないし、意識転換もできていない。だから市場主義は時期尚早である」という主張はあるでしょうね。
運営者 しかし,一刻も早くこの経済の中で市場主義的な部分の範囲を拡大するというのが、助かるための唯一の手だと思いますけどね。
飯坂 そのためには、みんなが市場主義的にならなければならないんだけど。逆に言うと、日本が資本主義の形態をとった社会主義であるというのも、国民の意識が社会主義的であるからなんですよ。
運営者 中途半端ってよくないじゃないですか。どちらかだと思うんですよね。社会主義なら社会主義をやればよい。
飯坂 じゃあ、東京だけ市場主義をやって、後の地方は社会主義をやればよい。社会主義であれば結果は平等であるし、計画性があるし。
運営者 まあ、無駄のない効率的な資源配分ができますよね(笑)。計画経済、ゴスプラン。
飯坂 それはちょっときついかもしれないけど(笑)
でも、そのほうがみんなコンフォタブルで、安心して働くことができると言うのであるならば、そっちの方がいいんでしょうね。
運営者 やっぱり社会主義は、人類の英知の勝利ですからね。
特に日本の現在の経済体制は、その中でも最も洗練された「国家社会主義」という体制に基づいているわけですから。
今、小泉政権のブレーンをやっている牛尾治朗さんは、同友会の代表幹事をやっていたときに、市場主義の徹底を主張していたわけです。小林陽太郎さんに代表幹事が変わってから、「市場主義を超えて」というタイトルの1年間の研究会をスタートしたんですよね。僕は、たまたま小林さんにお目にかかったときに、「非常に期待していますのでがんばってください」と申し上げたら、あれは東京電力の南社長がやっていたわけですが、小林さんも同様の期待をおっしゃっていました。
しかし、去年末出てきた結果というのは、「やはり市場主義以上のものはないから徹底しよう」という結論で、市場主義の周辺をうろうろしているという感じでした。やはりこれ以外の道はないんだと思いますよ。それでもこれを否定したいのならば、もう話すことは何もないという感じですね。
飯坂 結局今まで、日本が資本主義の形をとった社会主義といわれていたのも、日本人ってのが社会主義的な国民だったからという感じがしますね。
最終的には、住んでいる人たちが望むかどうかですよ。国民が市場主義や競争を望んでいないんだったら仕方がないじゃない。競争したくないんだから。