日本版「パールハーバー」
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 ああそうか、広告手段としてのマスメディアという企業からの要請はありますよ。だけどそれは、メディアの機能のごく一部にしか過ぎません。もっと頭の良い戦略的なメディアの使い方もできるはずですよね。
だけどそれとは別のものとして、個人個人がどのように自分自身の価値尺度をつくっていくべきか、どうすれば価値判断の能力を磨くことができるのかというガイダンス、これついては教育することもできるだろうし、現状ではやってるとは思えませんが、メディアが強力な影響力を持つコンテンツを流布することによって函養することもできるはずです。
飯坂 それにはちょっと懐疑的だな、「パールハーバー」を見てバカなことを言っている人が結構いるもんで。
運営者 あの映画を見て、「へー、日本てアメリカと戦争したことがあるんだ。どっちが勝ったのかな」と、それまで知らなかった歴史的事実に注意を向けた若者も少なくなかったみたいですよ(笑)。
ただの恋愛映画なんでしょう。アメリカが作ってけしからんというのなら、東宝に作らせればいいんでしょう。タイトルは「真珠湾攻撃」。
主人公は2組のカップルで、1人は海軍の航空隊員。彼は鹿児島の錦江湾で真珠湾奇襲の演習をしてるときに、たまたま不時着してしまって、近所の農家の娘に助けてもらい、彼女と恋に落ちて、「今度の大きな作戦から生きて帰ってきたら結婚する」ことを約束する。だけど彼は、生きて帰ってくることはないんですよ。もう1人はハワイにいる日系2世で、アメリカ軍の情報を探るスパイをやっていて、たまたま現地人の娘と恋に落ちるんだけど、真珠湾奇襲の後強制収容所に入れられてしまう。娘と結婚するために、442部隊に入ってヨーロッパを転戦してるうちに命を落としてしまうという、2組の悲恋のストーリーというのでいかがでしょうか。
飯坂 ハワイでスパイをやっていた日系人の話というのは、佐々木譲が書いてましたよ。
運営者 あらま。だから僕は、メディアがこれだけ多くの人々に訴えかける力を持つのなら、その機能を賢く使うべきだと思ってるんです。まぁモノを書いている人間だから、当たり前の発想ではありますが。
飯坂 常にメディアによる情報供給がなければ、精神的生活は成り立たないわけですからね。
運営者 だからそこにどういうコンテンツを載せるか、どういう規範を織り込むべきであるかは、メディアの創造に参加している人間が追及し続けなければならないテーマなんですよ。
飯坂 だけど、そんな高尚な人がメディアに、どれだけいますか。