書籍はマスメディアになりうるか
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 メディアが集中して同じようなものばかり作っているというのが問題ですが、書籍というのは、マスメディアにはならないもんですかね。
運営者 ならないでしょうね。広告を載せれば別かもしれませんが、基本的には単独で採算が取れなければなりませんから、マスメディアに必要な安定性がない。
飯坂 金融について書いてある洋書では、広告が載っているものもありますよ。
運営者 それは知りませんでした。だけど、もし本に広告が載っていたら、「この本の内容は中立的でなくて、スポンサーの意向に沿ったものかもしれない」と読者が誤解する可能性がありますよね。メディアの場合、情報の中立性が非常に重要なんです。
まあ、実際には企業が大量に買い取りをするということで出版が成り立っている本というのも、おそらく全体の2割くらいはあると思いますから、読者にとってはかなり迷惑な状況になっているといえるでしょう。利害関係が不明確な情報が書店に隠れているわけですから、本を最後まで読んでみたら結局著者側の宣伝だったりして、地雷を踏むようなもんですよね。
僕が今回書いた『慮る力』の場合は、そのような利害関係が一切ないことを示すために、わざわざ題字の対抗ページに
お断り
この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論考するものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。
と書いているほどなんです。
飯坂 アメリカには広告が載っている本はありますよ。モーゲージなどの金融商品の解説本で、コンサルタントなどの広告を本の後ろにずらりと載せているんです。
運営者 日本にはそういう形態はないですね。おそらくその本は専門書でかなり高いんでしょう。
だとしても、スポンサーの意図に反したことを書くことはできませんから、本の内容の客観性を損ねる可能性があることに変わりはありません。逆に言うと書籍というのは、利害関係のないところで自分の主張をすることができるという特性をもった媒体であって、だからこそ僕は、書籍を表現の手段として今のところ選択しているわけです。