日本人の資産は全て「公的資金」
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 ところでね、日本経済なんですけど、マジヤバイと思いませんか。
飯坂 企業は儲からないですよね、基本的に。製造業が儲からないんですよ。国内のリテールで稼ぐという会社が多いけれど、それは国内の富を使っているだけであって、
運営者 製造技術自体でも競争力がなくなって、EMSだって日本企業からソレクトロンに頼んでいる状態なんだから。自分たちの商品が独自性を持っていて、それで高く売れるとか、あるいは安く生産できるから価格競争力があるとか、現状はそういうことではなくなっています。それで、同じような商品を、同じような値段で出しているわけですから、つまり儲けがとれる部分がなくなっているわけです。それで利益なき繁忙を続けている。
じゃあ儲けが取れるようにするためにはどうすればいいのかというのが問題です。もう、マクロの話を考えるよりも、ミクロのことを考えるべきだと思いますよ。
飯坂 そうなんだよ。それで商社が企画した商品を中国で作って、それを国内でさばいてリテールで稼いでいるんだけど、これは日本から利益が出ていることにしかならない。今までの日本の富の源泉は失われて、これまでの蓄えを食べ尽くして行っているということ。そこに気がついている人はまだあんまりいないんじゃないの。
運営者 1985年の輸出比率は14.2%、それが2000年には10.8%で、アメリカよりも低くなっちゃっています。
アメリカでも、いくつかの産業は中南米やアジアに製造を依存しているけれど、国内に非常に強い金融業や航空産業、農業など利益が生み出せる産業を抱えていますよね。
飯坂 アメリカには、資本も人も流入してるよね。
運営者 日本の金融機関は、300兆円ぐらいアメリカ国債を持っているという説もありますね。嘘かホントか知りませんが。それだけ外国から公的資金を取り入れることができればいいですよね。逆の意味での公的資金だ。
日本の場合は公~民に公的資金が流れるんだけど、アメリカは逆ということで。さすが民主主義の国だ。頭が痛くなってきたぞ(笑)。
飯坂 郵便貯金に預けたら、日本政府に対する公的資金になって、生命保険に預けたらアメリカ政府に流れる公的資金になると(爆)。
運営者 面白すぎ。
ではTBというのは、投資先として妥当だと捉えられますでしょうかね。他の投資先という選択はないのかということなんですが。
飯坂 もちろん外債にもピンからキリまであります。米国政府機関債やモーゲージ証券からエンロン社債やアルゼンチン国債まで。プリンストン債なんてのもありました。でも日本人は上司が納得しないものは買わないんです。金融商品の仕組みとリスクを理解できない人が海外運用部門の上司として拒否権を持っていたりするとします。その上司が固い人だと米国債しか選択肢はないかもしれない。
運営者 まさかバブル末期あたりに当局からの、「米国債を買いなさい」という指示があったのでは。
飯坂 それはさすがに、明示的な形ではないと思うけど。でもまあそういう意味では、日米は経済的には不可分の存在になってますね。それはまあ、しょうがないです。
それがまあ、ここ10年ぐらいで、一般にも見えるようになっただけましですよ。それ以前は、事実は隠されていて、政財界の一部しか知らなかったんですから。
結局日本も、アメリカのマイナーな1つの州として、アメリカに参加するということになるんだろうね。
運営者 マイナーだけど、アメリカ国債の購入によって、アメリカ政府の運営に最大にコミットしている州ということになるんですよ。
飯坂 だったら、大統領選挙人を選出する権利があるような気がするけどね。
運営者 もし国債購入比率によって大統領が決まるんだったら、日本人から大統領が出ますよね。総額でも500兆円ぐらいしか出してないんだから。……狂ってますよ。
飯坂 狂ってるね。