田舎であるアジア諸国からの挑戦
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 結局それで、去年やった市場対策といっても、株式を購入する人に対する優遇税制とか、笑っちゃいますよね、ドイツでやった個人投資家の育成政策に比べれば、較べようもないほどの小手先の対策です。
飯坂 日本は、冷戦には勝ったんだけど、冷戦が終わった後のワールドオーダーの組み直しにおいて、完全に遅れをとったということだと思いますね。
運営者 その通りだと思います。日本人は、「冷戦が終わった、これからは新しい世界が始まるんだ」ということを、あまり実感として感じなかったですからね。
90年代初めに、「新しい時代が来た」という認識の整理はされなかったと思うんですよ。
飯坂 まあ、冷戦の間は一番ぬくぬくとしていましたからね。第一次世界大戦の間に好景気になって、その後対応できずに震災や昭和恐慌があって、大変な不況に突入していったという歴史を思い出しますね。言ってみれば、「楽して儲ける」というのは、「結局しっぺ返しを食う」ということでしょう。
運営者 なるほど、教訓的な結論ですな。
飯坂 結論ではないんですけどね、何回同じことをやったら気が済むのかと思いますよ。
運営者 結局60年たって一回りしてきたら、またおんなじことをやっているということですな。国債の償還が60年っていうのは、僕はやめた方がいいと思うな。
飯坂 「そんな遠い先のことは、俺は知らない」という考え方なんでしょうね。
運営者 無責任ということですね。
飯坂 それでね、その先の60年の間に、もうひとつのサイクルが入ってるんですよ。大阪の没落はいつ始まったかということなんですけど、つまり戦争終わって30年たってから始まっているんですね。
運営者 万博がエポックではなかったかという人はいますね。
飯坂 大阪の没落は東海道新幹線の開通によって徐々にヒト・モノ・カネが東京に流出して始まったと思います。それで、日本の文化の中心であった上方が、田舎であった東京からの挑戦を受けて没落していったわけですが、その30年後に今度は日本全体が、田舎であるアジア諸国からの挑戦を受けているというのが現状ではないでしょうか。
それをどうやって跳ね返すかという話でしょう。
運営者 歴史の必然を信じる人であるならぱ、「ジタバタしても仕方がない」と言うでしょうね。あるいは空間経済学的に言うと、「大阪から東京へ」というモメンタムが働き始めると止めようがないとか。
飯坂 もし「都会は必然的に田舎の挑戦に負けてしまう」というのであれば、自ら田舎に降りていってしまうという手がありますよ。それがベンチャースピリットに通じるものかもしれません。
運営者 なるほどね。つまり日本はアジアに対する最後の挑戦をするということですな。
アメリカの強みはそこにあるのかもしれませんね。あいつらは自分で「俺は田舎者だ」って威張ってるんだもん。それは知恵ですよ。人間は自分が取れる選択の中で、一番自分にとって得なもの採用すればいいわけですから。それに、田舎者のままでいれば、ずっと挑戦する側でいられるわけですし。
飯坂 そうですね。
運営者 それに対して、日本は「アジアの一等国」と言ってますからね(笑)。
飯坂 最近は台湾や香港の、日本が好きな若者たちのことを「哈日族(ハーリーズ)」と言うらしいですね。そういう日本を追いかけている人たちがいるというのをうれしがること自体、滅亡の始まりなんですよ。