田舎者の愚直さと集団志向性
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 うーん。それでどうですか景気は、GDPが少なくとも4半期で3%減っているというのは事実ですよね。
飯坂 企業の収益力が下がっているというのは、事実です。それは認めないと。株価に一喜一憂しても仕方がないというのは本音であって、日経平均が1万円を切ろうが切るまいが、仕方がないですよ。
それで、一部の含み益の少ない金融機関が青くなるのも仕方がない。だけどそれ以外の会社は別に……。
運営者 「日経平均の意味とは何か」ということですよね。昔みたいに、都市銀行の株価が横並びだった時代にはそれなりの意味があったんだと思いますけど、今は、いい会社は上がるし、だめなカイシャは下がるということですから。
価値創出能力を持っている会社の株価は、勝手に上がるんですよ。まあ、ここまで悪くなると、上がるものも上がらないかもしれませんけどね。
飯坂 まあ、日本人は金融で食っていけるような人種じゃないですよ。
運営者 やっぱり、考え方が違うんですかね。
飯坂 違いますよ、それは。30年くらい前に、美輪明宏さんの「ヨイトマケの歌」というのがありましてね。
運営者 母ちゃんのためならエーンヤコーラ
飯坂 あの歌の中で、昔はいじめられていた子供が、「今じゃ僕もエンジニア」という歌詞があるんです。その当時は、大学出てエンジニアがひとつの成功のあかしだったわけです。
それがバブル期に出た「一杯のかけそば」では貧しい子供が長じて銀行員になっている。銀行員は、日本人のわかりやすい成功のあかしだったわけです。
逆に言うと、エンジニアを冷遇してきたということです。中村修二教授が日亜化学を訴えたのは、本当にエンジニアによる革命の始まりかもしれませんよ。
運営者 企業がインセンティブを与えないどころか、エンジニアを委縮させることにより、開発意欲が多いに削がれて、日本企業の競争力を削いでいるということですか。
わからないんですよぼくは、日本企業はあんなに研究開発費を使う必要があるのかどうか。ばく大な研究費を使っているなと思っても、TIの研究開発費に比べれば、全然少ないわけですから。
飯坂 TIは基礎研究から撤退するんですよ。半導体にこれ以上投入しても、世の中変えるようなものが出てくるとは思えないということでしょう。こういう経営判断は日本企業にはできないでしょうね。
日本が製造業で世界に冠たる地位を占めることができたのは、アメリカの田舎の、さらに田舎だったからじゃないかと思うんです。だから製造業か栄えたわけですよ。
運営者 それ面白すぎ。正しいんじゃないですか。鋭いですよ。田舎の強さですな。
日本人の持っている特性というのは、田舎者の愚直さとか、集団志向性とかですから。
飯坂 まさに田舎者じゃないですか。田舎者だから成功したんですよ。