おいしい部分は田舎である中国に行っちゃった
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 日本は、均質な田舎者が1億人いたから成功したということだよね。
運営者 まあ実際に働いていたのは1000万人~2000万人でしょうけどね、他の国にしてみればそれだけの組織だった労働者というのはすごい脅威ですよ。人民解放軍だって500万人しかいなかったわけですから。
飯坂 しかも中国じゃあ、民族はバラバラだしね。だったらやっぱり勝って当然だったかもね。
運営者 でもその競争力のコアは非常に脆弱であったということを認めなきゃ。比較優位なんですよ、これ。
飯坂 アメリカに対しての田舎の工場として発展してきたわけだから、その日本人が都会者の振りをしてしまったら、もう田舎者の強さは失われてしまうよね。給料も高くなったし。
運営者 日本人が都会者になったかどうかは知らないけれど、コスト競争力が落ちたことだけは間違いがないですね。
飯坂 おいしい部分は、田舎である中国に行っちゃったんですよ。
運営者 彼らは田舎者の特徴であるハングリーさを持っていますからね。
飯坂 今までは箸にも棒にもかからなかったんだけど、改革開放政策によって「何とか使えるじゃない」というところまできてるからね。
運営者 ただ連中は、若年労働者の使い捨てをやってるから、あれは新たな社会問題を引き起こすと思います。その一方で、もう一人っ子政策を止めてるんです。あいつらは賢いですよ、少なくとも日本の為政者よりは。このままだとインドに抜かれますからね。
飯坂 中国のことは置いておいて、もう日本には田舎的な生産基地として生き残る道は残っていないわけです。
となると、アジアに対する都会としてどうやって日本が生き残っていくべきかという問題になるんですが、そこのところで大阪の没落の問題とかかわり合ってくるんです。
運営者 へえー、どういうことですか。
飯坂 昔は、日本の中の都会は京阪神だったわけで、その上方文化が、日本国内をマーケットとして、自家消費の部分だけで生き残ることができなかったというのは、わかりやすいケースだと思うんです。文化で金をもうけるというのはどういうことかという話です。
運営者 それはわれわれの間では結論が出ていて、文化は2つに分けられる。大衆消費文化と、そうじゃない文化と。大衆消費文化は「神」を作ってどんどん儲けなさいっていう話ですから。
ボクもね、大阪の没落というのは実感しますよね。昔は大阪は商業工業の中心だった。御堂筋が、経済力の象徴でしたからね。それが今日ご覧の通りの没落です。
彼らは、拱手傍観して没落して行ったんだろうか。今のわれわれと、全く同じように。