「損得勘定は好ましくない」という
お役所のロジック
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 それでですね、日経新聞に載っていて、これはすごいと思った記事があるんですよ。
本間正明教授が財政諮問会議で打ち上げた「社会福祉個人勘定」に対して厚生省は
「損得勘定を助長し、好ましくない」
とコメントした。
飯坂 それはほんとにすごいね。
それは本心でそう言ってるのかな。制度を変えるのが嫌だからそう言ってるだけじゃないのかな。
運営者 「一度作った秩序を壊すようなことは言うな」と。「そんなことをしたら困る人が出てくるんだぞ」と。困る人が出てくるということは、役所の責任にになるからでしょうかね。
飯坂 いやいや、役所自体が利害関係者だからですよ。年金事業団にOBが天下りしてるんだから。
運営者 本来は役所は客観的かつ公正に執行を行う機関であるべきなのに、利害関係者本人になちゃってるわけですね。
飯坂 だから今現在、受益者に対して損を与えているという事実は明白なんだけれど、損得勘定で考えられてしまうと、その含み損をマーク・トゥ・マーケット(時価会計)しなきゃいけないから、そうなると責任問題になってくる。だから、損得勘定で考えるのはやめましょうということだろう。
運営者 その最後の「だから」というつながり方が、よくわからないんですけど(笑)。
損得勘定で考えなければ、役人が開けた穴はいくらでも隠しておけるわけだ。物事の本質から目をそらし続けて、生きていくことができると考えているわけですな。
飯坂 そもそも損得勘定の否定というのは、資本主義の本質を否定する、パラダイムの一大転換ですよ。
運営者 そりゃあね、もし損得勘定しなくてすむのなら、経済学や経営学は意味なさなくなりますからね。
まあ、彼らは特別会計のバランスシートだって、外部からの圧力がなければ作らなかったんですから。
帳簿に記載した簿価は、「これはこれで規定の事実なんだから、再評価なんかしちゃいけないんだ」と。「幾ら穴が開いていても、これはここにあることになってるんだから、ガタガタ言うな」ということですよ。まあ5年前までは、全日本企業がこういう考え方でしたけどね。不良資産の帳簿上での付け替えをやって、ヤバイものは子会社に飛ばしたり先送りして、毎年の利益を確保しているように見せかけていた。
しかし、本気でそう思ってるのかな。使い込みはもちろんまずいけど、インフレによって資産の価値が変動するということはあるわけじゃないですか。それを「そんなものフォローしなくてもいい」と考えられるんだろうか。正気ですかね。