常に価値は変動するからリスクヘッジは当然
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 それはね、社会主義的な発想というのはそうなんですよ。経済成長とか、技術革新とか、そういうダイナミックな発想というのは、マルクスの時代にはなかったんです。経済成長はあるんだけど、構造が変わることなく量だけが一律に増えていくということを前提にしてるわけです。セクターによって成長率に差があるなどということは考慮に入れていないでしょう。
社会主義が負けた非常に大きな原因は、技術革新を考慮に入れていなかったことだと思います。日本の技術革新と、大量生産の製造技術は、社会主義を打ち負かすのに力があったと思いますよ。
それで簿価主義というのは、そういうスタティックな社会主義的発想ですよね。それに対して時価主義というのは非常にダイナミックな発想です。常に価値は変動するのだからリスクヘッジをしなければならないってわけです。
財投にしたって、開銀の貸し出しにしたって、20年間固定金利なんていうレートを、平気で出してますからね。どうやってリスクヘッジしているのかわかりませんけど。
少なくとも財投の金利は固定ですからね。だから住宅金融公庫に毎年3000億円の税金からの補填が必要なんです。で、「繰り上げ返済は認めない」と頑張っている。
残存期間が平均10年くらいあるでしょうから、2兆円ぐらいはそういう含み損があるでしょうね。
まあ20年位前まではアメリカでも、債券は固定金利で一度買ったら満期まで保有するのが一般的で、金利リスクのヘッジなんて考えてませんでしたからね。期間の違う債券は別々のトレーダーが担当していて、イールドカーブなんて見ていなかった。日本の公的金融はその時代から抜け出せていないんです。
運営者 本来はヘッジする手段はあるはずなのに、それをやるのが嫌なだけでしょう。政府がやるのはせいぜいその程度の仕事であるということですよ。政府にリスクヘッジする能力がないのであれば、「そのようなものに手を出すのは火傷するからやめなさい」っていうのが本来の姿でしょう。
そして、「政府がその程度であるのなら、民間はその程度以下でいいであろう」という考え方をするのが都銀の連中ですよ。
勘弁してくださいよ。自分がヘッジができないからって、人に「損得勘定をするな」というのはあんまりですよ。
飯坂 政治家に持ち込んでも、政党に持ち帰った時点で、「そうだそうだ、損得勘定などけしからん」という話になるでしょうな。
運営者 なぜそうなんでしょう。損得勘定をしていない人間なんて、われわれの周囲にいますか?
飯坂 いないと思いますよ。その人がその組織に属しているのは、そこにいることがその人にとって一番得だからいるんだという判断は、みんなしてると思いますけどね。