全員が損失を負担するのなら問題は存在しない
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 もうひとつの考え方はね、「将来どのようなロスが発生しようとも、自分たち全員が均等に負担するんだから問題はないんだ」という考え方ですよ。そういう絶対的な平等主義が、なぜか不公正の担保になっているのでは。
損失も、全員がそれを負担するのであれば、それが問題ではないと認識しちゃうわけです。
飯坂 そんな考え方ありますか?
運営者 だけど、「損得勘定をするな」という言い方を延長していくと、そういう考え方があるように僕には思えるんですね。そこから抜け出る人がいてはならないんです。相互扶助の発想の根底には、それがあると思うんです。これはそういう結社ですから、ヤクザの組織と基本的には同じなんだから、そこから抜け出るときには「指一本置いて行け」という話なんです。
飯坂 じゃあ、三菱自動車のリコール隠しの件は、どのように説明しますか。
運営者 彼らの眼中には株主の存在なんか、見えませんから。リコール隠しがばれて、大変な思いをすることになっても、「全員がそれをかぶるのであれば問題ない」ってことなんです。
飯坂 バレたら、その時点で大損害なわけじゃないですか。
運営者 いやいや、集団志向性が異様に高い日本型組織では、「全員が受苦している」ということが、すべてのことを押し通す言い訳になるんですよ。だから三菱自動車の新社長は社長交代会見で「全社一丸となって」と言っていたわけです。傷を舐め合うのは、マイナスを打ち消すことができる免罪なんです。そしてばれた時に、マスコミや世間から断罪されている自分たちは、さらに結束を固めることができるというわけです。
なぜならば、真の宗教者は弾圧されるものだからなんです。「我に法難を与えたまえ~」
飯坂 ちょっと、理解の限界だな。
運営者 実際に事件が起きた後に三菱自動車で早期退職者を募ると、初日に1200人の枠に対して、2028人が応募しましたからね。52才までで足切りですよ。上司の指示に従ってリコール隠しに荷担した若手は泣きの涙です。
それは非常にまずいんだけど、日本人全体が、文句を言わずに負担を受け容れてくれるのならば、そこには問題はほぼ存在しないに等しいんですよ。
飯坂 全体が沈んでしまったらどうなるんですか。
運営者 外国と比較すれば沈んでるんですけど、日本人同士の負担が均等であれば全く問題は感じないということですね。
飯坂 みんなが等しく貧乏になるのであればいいんだ。
運営者 そうなんです。「われわれは同胞なのだから、そのような苦しみも等しく受け入れるであろう」というのが、「損得勘定などをするのは卑しいことである」という考え方の根っこにあるのではないでしょうか。
これはだから、カルトのロジックなんですよ。
飯坂 うわー、そんなバカなことが。
運営者 文明人のすることじゃないですよね。
飯坂 いや、文明人じゃないというのはほぼ明らかなんだけどね(爆)。