「ルネサンス人像」を明確に定義すると
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 それで、これらの「自立性、合理性、社会性、市場性」という4つの意識の極のまん中に、以下のような新日本人特有の意識が形成されるでしょう。
「オレはあくまでもオリジナルの価値を創り出してみせるぞ」というプロ意識
「自分は社会や組織の中である役割を求められており、それをきちんと責任を持って果たす必要がある」と考える役割意識
「社会の中で決められているルールを無視してはならない」という遵法意識
「自分たちは常に市場で競争しているのだ」と考える健全な競争意識
競争しながらも、自分の所属組織の部分最適だけを考えるのではなく、組織や社会の全体最適を考えなければならないという全体最適を追求する意識
自分の周囲の限られた人だけでなく、新しい人たちと次々と出会い、お互いの持つ資源をうまく利用し合うネットワーク能力
パートナーと対等で継続的な関係をつくるパートナーシップを作る能力
こうした旧日本人には欠けている、あるいは価値としてほとんど尊重されていない意識が備わってくるはずなのです。
これが、山本七平が"自由"と"個人"という脱出口からのぞき見た、外の世界にある新しい日本人像なのだと思います。私は今度の本の中で、日本のビジネスマンの行動を帰納的に分析することによって、こうした新日本人の特性を明らかにしました。
これによって、新日本人は千年以上もの間の旧日本人的な呪縛から自らを開放することができる。全く質的に違う人間に生まれ変わりつつあるのだと考えています。そしてこのように変身することにで、日本人は自らのあらゆる分野における自らの可能性やチャンスを、これまでにないほど大きく広げられるはずなのです。
「ルネサンス」とすら言える大転換が、現在の日本で進行中なのです。
今から2年前に、われわれは「新日本人の立場からの、ある種の文芸復興を行う必要すらあるのではないか」と話し合っていましたが、そのルネサンスの姿形を、われわれはおぼろげながら把握できる地点にまで来たのではないでしょうか。