旧日本人の意識構造を解明する
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 では、ここで今までいろいろと述べてきた旧日本人の意識構造がどのような成り立ちになっているのか、きちんと構造化しておきたいと思います。
この表の横軸は自分と他人、縦軸は心の中と行動というふうに分類して意識を考えるという、毎度お馴染みのヘイ・コンサルティング=ダニエル・ゴールマンの方法に習ったものです。
■自己認識
左上の象限は、旧日本人がどのように自己認識しているかということを表しています。
まずはっきり言えることは、旧日本人は権威に依存しているということですね。自立をあくまでも拒否して、自分以外の何者かに自分のアイデンティティーを仮託しているというのが、旧日本人の旧日本人たるゆえんです。
その依存の対象は、国家や会社といった、人間が自分たちの手で創り出したモノです。「自分で作ったのだから、自分で変えられる」とは考えない。それを永久不変のものとして、ありがたくたてまつり、そこに寄りかかろうとするわけです。「これはこういうものだから、これでいいんだ」という現状の全面肯定ですね。
バカバカしいことですが、これは弱い人間にとっては非常に便利なことなんです。これによって、自分が何をしても責任というものは生じなくなりますし、自分から活発に外の世界を開拓しようという気持ちも失ってしまいます。その必要はなくなりますから。
彼らは「自分が寄りかかっている権威の支配力の及ぶ範囲でしか自分は生きることはできない」と考えています。ですから非常に閉鎖的で内向きな行動傾向になります。自分たちの信じる権威の下で認められている価値観を「絶対的なものであり、世の中のすべてである」と信じているので、その外の世界の普遍的な価値観を軽視する傾向があります。また、外部の情報を積極的に吸収しようとはしません。自分が信じている価値をにダメージを与える恐れがありますからね。どちらかというと「外からの情報には耳をふさぐ方がよい」と思っています。
■他者認識
それで次に、旧日本人は他人をどのように認識しているか、が右上の象限ですが、山本七平が書いたように、「自分と他人は大体同じようなものの考え方をするし、同じような行動をする」という、絶対的な平等感覚を持っています。「人と人との間に差をつけるのはよくないし、同じ価値を信じているのなら、経済的待遇もまた同じようなものであるのが好ましい」という意識を持っています。
この平等感は非常に強力なものです。「仲間と自分は常に平等である」という意識が、旧日本人の価値観の根本にあります。
ただし、それを唯一乗り越えることができる絶対的な基準があります。それは年齢です。だから旧日本人は年齢に差別の根拠を置くのです。これは努力や能力と関係のないものですが、年功序列にしておく限り、社会の秩序は揺らぎませんし、やっぱり「自分と他人は大体同じようなものの考え方をする」という認識も揺るがないのです。