「組織の論理」と天皇制の力学
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 旧日本人の持つ唯一の目的性というのは、そういう内向きで閉鎖的な人間関係のルールを保ちつつ、自分が戴いている天皇の権威をさらに高めるために、ひたすら自分たちの組織を肥大化させようとすることでしょうね。これすなわち「組織の論理」ですよ。
飯坂 自分たちは天皇と一体化しているわけだから、天皇が偉くなれば自分たちも偉くなるという理屈ですね。
運営者 そういう人もいるでしょうね。それはかなり純粋な旧日本人ですよ。
だけどもう、官僚はそう思っていないでしょう。官僚はもっとズル賢くて、「自分たちは天皇(その組織の)よりも偉いし、天皇をコントロールしている」と自覚していると思いませんか。
飯坂 だから、彼らは確信犯で、天皇が空気であるということはわかっているわけじゃないですか。
大切なことは、各省庁を束ねる天皇がいるわけではなくて、各省庁の中に天皇がいるということです。
運営者 総理大臣は、自民党の天皇であって、役所とは関係ないということですね。
飯坂 総理である前に総裁であるということですね。幹事長の方が実は天皇だったりする。
運営者 役割認識の体系が崩壊してますな。
それでなぜ旧日本人は内向しよう、自己完結しようという性向を持っているのか。
それは自立していないからですよね。山本七平の言葉で言うと、「自己の意志の否定、自己の行為への責任の否定」、つまり自分の個性を殺してしまうというのがまず前提にあるわけです。そうして自分のアイデンティティーを仮託する天皇を前に押し立てて、その陰に隠れて、好き勝手なことをするわけです。
飯坂 自分も死んでいるが、他の人間も死んでる。みんな死んだふりをしている中で、自分だけが意識を持っているわけだから、巧くやることができるだろうと思っている。
運営者 姑息ですよね。
飯坂 それどころか、「自分以外の人間は天皇に盲従しているが、自分だけは覚醒していて天皇をコントロールできる。だから、民を率いることができるのだ」と思ってるんですよ。