お神輿経営はこんなに楽しい(2)
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 入社した時には、自分は神輿をかついでいるつもりなんだけれど、そのうちに「多少手を抜いても他の人が担いでくれるよ」という気持ちになってきますよね。なんだかんだ言って神輿は前に進むんですが、その進んでいく方向はあらかじめ超越的な誰かに決められたものであって、自分たちがディシジョンメイクをして決めたわけでもないし。
日本経済が伸びていく方向というのは、外部環境によって決められていたわけで、そちらの方向に何となく流されるようにして進んでいくうちに、会社として見てみれば業績が伸びていったということなんです。
運営者 そうすると、そこにおいて問題なのは、まず「最も効率的に移動しよう」という意思がないということですな。
飯坂 そもそも、「自分が神輿を担いでどちらかの方向に動かさなければならない」という自発的な意思はないでしょう。
それに加えて、神輿を担いでいる他の人たちに「われわれは、これからどちらの方向へ動こうか」というコンセンサスをとる必要性があるとも考えていないはずです。目的というのは天から降ってくるものなんでしょう。
運営者 天から降ってくるといいながら、実際のところは自分たちの都合のいいように設定してるんだと思いますよ。
飯坂 操作しているでしょうね。
だから、旧日本人の組織においては根源的にディレクションはできないということではないでしょうか。石原完爾だって、辻政信だって、あれだけ明確に自分の意思をはっきりと主張する人が他にいなかったから、みんながついていったわけでしょう。
運営者 陸軍の組織の中の行動文法において、「どの辺まで突出が許されるか」というギリギリの線を読み取るセンスがあったんでしょうねぇ。
飯坂 周りの空気を動かす方策を、他人よりも半歩先に実行できたから、周囲をリードできたのでしょう。
運営者 齋藤健さんの分析によれば、陸軍の中では前に向いて事態を推し進める分には、お咎めはなかったということみたいですね。
飯坂 「向こう傷は問わない」。バブルのころを思い出しますね。そういう空気に乗じさえすれば何だって許される。
運営者 旧日本型組織があるディレクションを与えられるためには、そのような方法しかないということなんでしょうね。