おもしろうてやがて悲しきお神輿経営
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 現在の日本が抱えている問題を一言でいうと、みんながお神輿を担ぐということではもうダメなんだろうな、ということです。
飯坂 本来は、いつの時代でもお神輿経営はダメなんだと思います。ただ単にここのところ日本はお神輿形でうまくいく環境があったんだと思うんですよ。
運営者 ではなぜ、みんながお神輿を担ぐということではだめなのでしょうか。
飯坂 だって、そこには冷静な戦略も明確な意思も何もないじゃないですか。
運営者 ありません。目標を見定めることも、目標を最も効率的に達成させることも、この状態では無理なんですよ、そもそも。
飯坂 ただのブラウン運動ですからね。ランダムにどこへ行ってもいいというのでは、それは経営じゃないよね。(笑)
運営者 わかりやすい。
飯坂 会社っていうのは、資本や労働力を結集させる必要があるわけじゃないですか。だけどブラウン運動というのはその逆ですからね。
運営者 エントロピーが増大していく方向ですからねぇ。
飯坂 本来は集中させなければいけないのに。
運営者 世の中では、時間軸にしたがってエントロピーが増大するのは当然のことです。それを如何にして排除して、株主資本と労働資本から生み出されるアウトプットを最大化するかというのがわれわれの課題のはずなんですけど。
飯坂 そうじゃないと、何のために集まってやってるんだかわかんないよ。(笑)
運営者 「したがって神輿はだめだ」と。これは確かに正しい。
しかしそれを、神輿をうれしそうに担いでいる人たちに理解してもらわなきゃいけないんです。彼らにしてみれば、朝から晩まで大変重いものを喜んでかついで、一生懸命汗をかいているわけですよ。わっしょいわっしょいとね。それが意味のあることだと信じているからですよ。
お神輿経営総括
1. 意思決定の欠如・思考停止
行き先は「空気」で決まる。誰も組織がどこに向かっているのか知らない。
2. 責任消失
権威と責任はあくまでトップにある。でもトップは何も知らない。
3. 家族主義
社員は平等な家族。平等な待遇。実力主義など導入してはならない。
4. 自己目的化
組織の目的は、「仕事をしている社員の生活を守ること」のみ。
お神輿経営初出「デヴのひとりごと」
お神輿経営の病理
【補筆】 こんなことを書いてるひとがいるので、ちょっと反論しておこうかな。
ビジネス・カレイドスコープ 第17回「お神輿経営」のすすめ 《リンク切れ》「神輿は行きつ戻りつどこへ行くか分からない、という見方も当たらない。(略)右や左に寄ったり、何度ももんで前に進まないことはあるが、これは担ぎ手が神輿と自分の晴れ姿をギャラリーに見せたいためだ」
会社というのは本来、社員がおいしい思いをするために他のステイクホルダーを犠牲にしていいというものではないでしょう。そういうダメな会社にある「不合理な意思決定 」「集団無責任 」「 不合理な集団主義 ・家族主義 」 「自己目的化 」を神輿に重ね合わせているのがわたしの「お神輿経営論」であって、神輿にはそういったものはないと書いてもらわないと、論破したことにはなりません。
ネタに使うのはいいけど、本質を外した批判で否定されるたのでのはたまりません。利益を最大化するという目的をすっかり忘れて「担ぎ手が神輿と自分の晴れ姿をギャラリーに見せびらかす」経営をやっていて、ほんとに社員やステイクホルダーが豊かで幸せになれますかね? そんな会社の株はわたしは買いたくない。わたしを「神輿を表面的にしか見ていない者」と書いていますが、この人は「経営や経済のあり方を表面的にしか見ていない者」じゃないかと思いますがね。