■新日本人は必ず勝つ
おやじ お前たちがなんのかんの言ったって、会社の実権を握っているのはわれわれなんだから、勝ち目はないぞ。ムダな抵抗をせずにみんなに従っていればいいものを、何をすき好んでわざわざ面倒を起こすのか、さっぱりわからんな。
「勝ち目のない争いをする」というのも新日本人の持ち味なのか。
若造 とんでもない。新日本人は、この戦いに必ず勝つんだよ。
おやじ どうしてだ、バカバカしい。お前たちは圧倒的に数が少ないわけだし、団結力がないから圧力をかけて話を通すこともできないだろう。その点われわれは、打って一丸となるのは得意だからな。進め一億火の玉だ、わはははは。
若造 われわれは、そういうやり方とは手を切っているのさ。だけど必ず勝つ。なぜなら、これから旧日本人になる人間の数はどんどん減っていくからだよ。
今から社会人になる人間が、「会社の神話」を信じて、自分で自分を会社に縛りつけて、人間関係にがんじがらめになって、わざと固定的なものの考え方をすることで安心を得ようとするだろうか。政府や会社を無条件に信じるだろうか。彼らはもっと自由で伸び伸びとした生き方を望んでいる。
それに、政府や企業の無為無策がここまで日本を滅茶苦茶にし、将来への不安をかき立てているのに、そうした権威を信じて自分の身をゆだねようとは、いったい誰が考えるだろうね。
おやじ そうか、しまった。平成社員以降のジコチューで自分勝手でわがままで、上司のいうことをさっぱり聞かない若造どもが増えてくるということだな。それは考えなかった。
若造 若者たちは2種類に分かれているんだよ。非常に仕事に対して熱心で、前向きに生きていこうとする頼もしい奴らと、とりあえず動物的な欲求さえ満足できれば「世の中のことなんかどうでもいい」というダメ人間と。
だけどダメ人間の方も、「自分が努力をしないからフリーター生活を続けていて、だから所得が低いのは仕方ない」と納得しているから、所得格差にあまり抵抗はないね。つまり若者の間では、すでに「平等社会」は崩壊しているんだよ。会社に入るのもだんだんむつかしくなるから、大企業には、大量採用していた昔とは違って、かなり前向きで意識の高い人間しか就職できなくなっている。
彼らは会社に入る前に、もうすでに新日本人としての意識の脱皮が終わっているんだよ。
おやじ そういう人間しか、これからは入社してこないのか。つまり言うことを聞かなくて、しかも生意気な社員が増えてくるということだな。けしからんな。