■新日本人は必ず勝つ2
若造 それと旧日本人が実権を握っている企業は、環境変化への適応が遅くなるから、これから激しさを増す競争の中でどんどん追い詰められ、業績が悪くなっていくよね。そして吸収合併されたりつぶれてしまう。そうすると残っている元気のいい会社というのは、新日本人的な社内風土を持った会社ばかりということに、加速度的になっていくはずなんだ。
おやじ そんな味気ない、人情味のない社内風土にみんな耐えることができるんだろうか? 「やっぱりこれはおかしい」という話が持ち上がって、古き良き日本企業に回帰する動きも出てくるはずだぞ。
若造 そういう旧日本人的な反動をする会社は競争に負けてつぶれてしまうから、やっぱり新日本人の社会が残ることになるんだろうね。
それと新日本人は不人情でロボットのような人間ではないんだよ。人生を楽しみ、生きるおもしろさを追求していく人たちです。だけどビジネスのルールはそれとは別で非常に冷徹なものであり、それにはルールとして従っていく姿勢があるだけなんです。
おやじ さぞかし生きにくい世の中になるだろうな。
若造 そうだよ。当たり前じゃん、だって生きるということは大変なことなんだから。気楽に世の中を生きられる方が異常なことだよ。
高度経済成長期以降しか知らない旧日本人は、人類の歴史の中でも最も物質的に恵まれていた人たちだと思う。だけど彼らは生きることの意味や、働く意味を深く考えずにすませてしまう恐ろしく不合理な意識を持った人間になってしまった。そういう人たちが国家や企業体をコントロールすることで、日本はどんどん追い詰められている。しかも、そういう「危機の瀬戸際に立っている」という認識すら旧日本人は持つことがない。それは当たり前だよね、危機をつくった張本人たちなんだから。
おやじ でもオレは、決して甘い汁を吸ってきたわけじゃないぞ。
若造 旧日本人はみんなそう思ってるんだよ。悪意があってこんなことができれば、人間じゃないもんね。そこにだけは救いがあるかも。でも結果的にはバブル崩壊以降ずっと、先人が蓄えた資産をリストラ原資にして吐き出しちゃったんだから甘い汁を吸ったことになるんだよ。
しかしまあそういう時代も終わったよ。会社という防波堤が旧日本人の意識を、環境変化に対応して変えることを防いでいるので、われわれ新日本人は今は苦戦している。だけどわれわれの仲間はどんどん増えている。
そして新日本人の全サラリーマンに占める比率があるポイントを越えると、水が気化して蒸発し、まったく性質の違う気体に性質を変えるように、どっと企業の体質は新日本人的に変化するはずだ。そうなったとき初めて、破滅を目指して一直線に進んでいた日本経済は、「さらなる繁栄」という新たな目標に向けて大きく進路を変えることができると思うんだ。失われた一〇年の波濤を乗り越えてね。