■批判精神の欠如・内向性 / 客観的批判精神
おやじ よく若手社員が、どこかで聞きかじってきた新しいビジネス手法を「導入したい」と大騒ぎをして、結局やってみると根づかなくて、時間のムダだったということがあるよな。まったく迷惑なことだ。
そういう奴に限って、失敗したくせに会社の外では「うちの会社の悪い点は」と酒を食らって文句を言っていたりする。まったくけしからん奴だと思うな。オレの部下にもいたのだが、自分に実力がないからといって、外来の知恵に頼って仕事を滅茶苦茶にして、失敗したからといって会社の悪口を言うというのは男の風上に置けない奴らだ。
だいたい、どうして会社の外で自分の会社や上司の悪口が言えるのか、そこがまたオレには理解できないね。だったら会社をやめればいいじゃないか。会社に居るんだったら、黙っていろということだ。
お前もきっと、上司にそう言われているに違いないな。
若造 「悪口」じゃないんだよ。問題となる事実を指摘してるんだよ。問題がわからなければ、解決の必要性がみんなにわからないじゃないか。
おやじ それにしても、上司に対する陰口は卑怯だし、心ないぞ。他の人のやっていることに目くじら立てないもんだ。金持ちケンカせずと言うだろう。静かにしてりゃみんな出世できるんだから。
若造 なぜ自分の口を意味もなく閉じなければいけないの? 憲法で言論の自由は保証されているんだから、何を言おうとぼくの勝手だよ。
指揮官である上司があまりにも無能だったら、部下は突撃できない。軍隊なら抗命は絶対許されないと思うけど、会社は軍隊じゃないからね。こちらは自主的に仕事に参加してる立場なんだから。だから「上司であれば無能でも許される」という理屈は、会社では通らないと思うね。
会社の悪口を言ってはいけないという姿勢は、旧日本人に共通のものだね。それはぼくに言わせてもらえば、「会社のする事を無批判、無条件に受け入れろ」という態度であって、「会社にぶら下がろう」という態度があって初めてできることだね。もし「仕事を通して会社の運営に参加しよう」という、しっかりした参加意識を持っている人であれば、自信を持って悪意なく会社の問題点を積極的に指摘しようとするはずだよ。
「会社の悪口を言うな」なんて、「日本人だったら、日本政府の悪口は一切言ってはならない」と言ってるようなもんだよ。そんなバカな! 戦時中じゃあるまいし。納税者なんだから批判する権利はあるよね。むしろ政府に対する監視というのはどちらかというと権利ではなくて、社会の健全な運営のためにやらなければならない義務かもしれないよ。
それと同じように、会社の戦略や、自分が属する部署、チームがやっていることを客観的に評価し、論評するというのは健全なことだと思うんだけど。
おやじ 神をも恐れぬ思いあがった態度だ。お前は「自分が働きかけることで社会を動かそう」なんて本気で思っているのか。大笑いだ。思い上がりもいいところだ!